ORCHARD試験のモジュール1として設定されているオシメルチニブ+Savolitinib併用療法について。
ORCHARD試験の前段階の臨床試験であるTATTON試験は、以前も何度か取り上げており、そのうちオシメルチニブ+Savolitinib併用療法の全体集団に関する解析結果は2022/01/26の記事に再掲しました。
今回は、その中から日本人患者集団を解析した報告について取り上げます。
冒頭に掲げたのは、本報告論文からデータを抜粋してまとめたものです。
そうはいっても、ORCHARD試験で募集されている患者さんの背景とTATTON試験の患者背景は異なりますし、本報告においてオシメルチニブ+Savolitinib併用療法を受けた患者さんはわずか12人であり、結果の解釈は慎重に行うべきですが、有望な治療だからこそORCHARD試験においても治験治療として設定されたのだと思います。
Savolitinib ± Osimertinib in Japanese Patients with Advanced Solid Malignancies or EGFRm NSCLC: Ph1b TATTON Part C
Kiyotaka Yoh et al., Target Oncol. 2021 May;16(3):339-355.
doi: 10.1007/s11523-021-00806-5. Epub 2021 May 3.
背景:
選択的METチロシンキナーゼ阻害薬であるsavolitinibと第3世代非可逆的経口EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブの併用療法は、MET遺伝子変異やMET増幅によりEGFRチロシンキナーゼ耐性を克服するかもしれないと前臨床試験において示されている。
目的:
日本人の進行固形がん患者において、savolitinibの安全性・忍容性を評価すること。
方法:
多施設共同、オープンラベル、複数治療群設定デザインである第Ib相TATTON試験のパートCにおいて、日本国内6施設において日本人成人の患者2グループを評価した。進行固形がんの患者集団を対象に、savolitinib単剤内服療法を1日1回400mg内服から開始し、最大600mgまで漸増し評価した。一方、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療後に病勢進行に至ったEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者を対象に、オシメルチニブ80mg/日+savolitinib 300/400/600mg/日の併用療法について評価した。主要評価項目は安全性・忍容性、それをもとに最大耐用量を決定することとした。
結果:
17人の患者がsavolitinib単剤療法を、12人の患者がオシメルチニブ+savolitinib併用療法を受けた。savolitinib単剤療法において、400mgの段階では用量制限毒性は認めず、600mgの段階では9人中3人(33%)で用量制限毒性を認めた(グレード3もしくは4のALT, AST上昇、グレード4の薬剤性肝障害)。オシメルチニブ+savolitinib併用療法において、savolitinib 300mgの段階では用量制限毒性を認めず、400mgの段階で6人中1人(17%)で用量制限毒性を認めた(グレード2の倦怠感、嘔気、筋肉痛)。600mgの段階では4人中3人(75%)で用量制限毒性を認めた(グレード2の発熱、グレード3の皮膚毒性、グレード3のアナフィラキシーショック)。savolitinib単剤療法では41%に、オシメルチニブ+svolitinib併用療法では33%にグレード3以上の有害事象を認めた。TATTON試験の患者集積は既に終了している。
結論:
savolitinib単剤療法、オシメルチニブ+savolitinib併用療法いずれにおいても、savolitinibの最大耐用量は400mgと決定した。いずれの治療においても、毒性プロファイルは管理可能だった。