・オシメルチニブとMET阻害薬savolitinibの併用療法

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 ORCAHRD試験に関連した話題として、その前段階の試験だったTATTON試験の結果について、約2年ぶりに再掲します。

 

 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんで、オシメルチニブ初回治療後に耐性化した際、次に何をするかという話題であり、我が国の実臨床においても同じような状況に遭遇した患者さんは少なくないと思います。

 MET遺伝子増幅や変異が耐性機序だと判明した場合に、果たしてオシメルチニブにsavolitinibを上乗せすることで耐性を克服できるのでしょうか。

 オシメルチニブ耐性化後の患者さんにおける奏効割合は30%とのことですが、耐性機序にMETが関連している患者を絞り込めば(つまり、ORCHARD試験におけるグループA、モジュール1に組み入れられるような患者さんならば)、もう少し成績は向上するかもしれません。

 アナフィラキシー反応と気胸がそれぞれ4%ほど見られたというのは、他ではあまり経験しない有害事象です。

 

 

Osimertinib plus savolitinib in patients with EGFR mutation-positive, MET-amplified, non-small-cell lung cancer after progression on EGFR tyrosine kinase inhibitors: interim results from a multicentre, open-label, phase 1b study

 

Lecia V. Sequist,et al., Lancet Oncol 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(19)30785-5

 

 前臨床試験のデータから、MET経路により耐性化したEGFR遺伝子変異陽性肺がんに対して、EGFR阻害薬とMET阻害薬の併用療法が有効な可能性が示されていた。選択的METチロシンキナーゼ阻害薬であるsavolitinib(AZD6094,HMPL-504,volitinibとしても知られている)

と、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブの併用療法に関する第1相臨床試験データにより、推奨用量が設定された。今回は、TATTON試験における2つの拡大コホートについての中間解析結果を報告する。

 コホートBでは、第3世代EGFR阻害薬による治療歴がある患者と、第3世代EGFR阻害薬による治療歴がなく、T790M陰性もしくは陽性の患者の、計144人を対象とした。本コホートでは、オシメルチニブ80mg/日とsavolitinib 600mg/日(のちのプロトコール改訂により、体重55kg以下の患者8人では300mg/日に減量された)を投与した。

 コホートDでは、第3世代EGFR阻害薬による治療歴がなく、T790M陰性の患者42人を対象とし、オシメルチニブ80mg/日とsabolitinib300mg/日を投与した。

 Grade3以上の有害事象は、コホートBの57%で認め、AST上昇(7%)と好中球減少(7%)の頻度が高かった。コホートDでは38%で認め、肺炎(12%)と薬剤過敏症(7%)の頻度が高かった。重篤な有害事象はコホートBの45%に認め、頻度が高かったのはアナフィラキシー反応(4%)と気胸(4%)だった。コホートDでは26%で認め、肺炎の頻度が高かった。コホートBでは2人の治療関連死(急性腎不全1人、負傷1人)を認めた。

 コホートBのうち評価可能であった138人における奏効割合は48%(すべて部分奏効)で、第3世代EGFR阻害薬の治療歴がある患者69人での奏効割合は30%で、第3世代EGFR阻害薬の治療歴がなく、T790M陰性の患者51人での奏効割合は65%、第3世代EGFR阻害薬の治療歴がなく、T790M陽性の患者18人での奏効割合は67.5%だった。中間解析時点におけるコホートBの奏効持続期間中央値は9.5ヶ月で、6ヶ月時点で奏効状態を維持している患者は67%だった。

 コホートDのうち評価可能であった36人における奏効割合は64%(すべて部分奏効)だった。中間解析時点におけるコホートDの奏効持続期間中央値は8.0ヶ月で、6ヶ月時点で奏効状態を維持している患者は71%だった。