・TATTON試験より、デュルバルマブとオシメルチニブの併用療法(ELCC2016)

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 2016年に報告された、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する、デュルバルマブとオシメルチニブの併用療法について、5年ぶりに再掲します。

 この結果を踏まえて、TATTON試験の発展形と考えてよいORCHARD試験において、本併用療法は治験治療モジュールからは外されているようです。

 

 結論を一言で言ってしまうと、有望な腫瘍縮小効果が確認されたものの、40%近くで間質性肺炎を合併したそうです。

 EGFR阻害薬単剤で間質性肺炎を合併する確率は一般に2-3%とされているので、40%は看過できない割合です。

 5人治療したら2人が間質性肺炎を合併する・・・ちょっと考えたくありませんね。

 

ELCC 2016

Date: 15 Apr 2016

Topic: Lung and other thoracic tumours / Cancer Immunology and Immunotherapy / Anticancer agents & Biologic therapy

Abst #136O.

Osimertinib combined with durvalumab in EGFR-mutant non-small cell lung cancer: Results from the TATTON phase Ib trial

 

 TATTON試験は、オシメルチニブ 80mg/日内服に様々な薬を併用する第Ib相試験である。併用薬は、デュルバルマブ(抗PD-L1モノクローナル抗体)、Savolitinib(MET阻害薬)、またはSelumetinib(MEK1/2阻害薬)で、EGFR遺伝子変異陽性進行肺癌患者を対象とした。オシメルチニブ+デュルバルマブ併用療法は本試験のひとつの治療群に過ぎないが、2つのパートに分かれている。パートAはEGFR阻害薬による治療歴のある進行非小細胞肺癌患者を対象とした用量設定試験であり、パートBはEGFR阻害薬による治療歴がない進行期の患者を対象とした拡大試験である。

 

 オシメルチニブ(AZD9291)は経口・不可逆的第3世代EGFR阻害薬で、EGFR遺伝子変異陽性ないしはT790M耐性変異陽性肺癌患者を治療対象としており、一方のデュルバルマブ(MEDI4736)は高親和性ヒトIgG1クラスモノクローナル抗体で、PD-1とCD80双方に結合するとされるPD-L1をブロックする。

 

 今回は、TATTON試験におけるオシメルチニブ+デュルバルマブ併用療法のパートA,Bから得られた最新の安全性データが報告された。TATTON試験では免疫チェックポイント阻害薬に不適格な患者、間質性肺炎の既往がある患者は除外された。

 

 パートAの患者は、EGFR阻害薬治療を受けた後に病勢進行となった患者で構成されていた。パートBの患者では、腫瘍生検とT790M変異に関する中央診断が義務付けられていた。パートAの患者では、オシメルチニブ 80mg/日の服用とデュルバルマブを2週に1回、3mg/kgもしくは10mg/kg静注で治療され、パートBの患者では、オシメルチニブ 80mg/日の服用とデュルバルマブを2週に1回、10mg/kg静注で治療された。

 

 主要評価項目は安全性と忍容性であり、副次評価項目は臨床効果だった。

 

 データ解析時点で、オシメルチニブ+デュルバルマブ併用療法はパートAで23人の患者に、パートBで11人の患者に投与された。パートAにおいて、全グレードで頻度が高かった有害事象は、嘔気(39%)、嘔吐(39%)、貧血(35%)、下痢(35%)だった。パートBでは55%に下痢が、45%に嘔気が見られた。

 

 間質性肺炎はパートAでは6人(26%)に認め、うち2人はGrade 3 / 4だった。同様にパートBでは7人(64%)に認め、うち3人はGrade 3 / 4だった。間質性肺炎による死亡例はなかった。ほとんどの患者は副腎皮質ステロイドの投与を受けた。治療開始から間質性肺炎発症までの日数の中央値は69日だった。

 

 パートAでは、21人(91.3%)の患者において奏効を認めた。明らかな腫瘍縮小を認めた(PRin)のは12人(52.2%)、そのうち腫瘍縮小が一定期間持続した(PR確定)のは9人(39.1%)だった。病勢安定は9人(31.9%)で確認された。

 

 パートBでは、10人の患者が評価可能であり、8人(80%)がPRinであり、うち7人(70%)はPR確定、病勢安定は2人(20%)で確認された。

 

 今回の報告では、間質性肺炎合併割合が38%で、そのうち5人がGrade 3 / 4であり、オシメルチニブもしくはデュルバルマブの単剤療法に比べると遥かに頻度が高いが、間質性肺炎の重症度には明らかな差異はなかった。一方、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者に対するオシメルチニブ+デュルバルマブ併用療法は有望な臨床効果をもたらした。特に、EGFR阻害薬既治療の患者での奏効割合は、T790M陽性患者で67%、T790M陰性患者では21%、EGFR遺伝子変異陽性で治療歴のない患者では70%だった。

 

 オシメルチニブ+デュルバルマブ併用療法の安全性・忍容性については更なる調査が必要と判断され、結果としてTATTON試験におけるオシメルチニブ+デュルバルマブ併用療法の患者登録は中断されている。

 

大分での肺がん診療:DurvalumabとOsimertinibの併用療法(ELCC2016) (junglekouen.com)