・第II相OPAL(NEJ032C / LOGiK1801)試験・・・オシメルチニブ+ペメトレキセド+プラチナ製剤併用療法

 

 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんに対し、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法が非常に有効で、生存期間中央値は実に49カ月と報告されています。

 

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 ゲフィチニブでこれだけ良い結果が示されたのなら、オシメルチニブならさらに良い結果が期待できるのではないかと考えるのは当然で、FLAURA2試験で検証されているところです。

 

 今回取り上げるのは第II相OPAL試験の結果で、FLAURA2試験の行く末を占うような試験デザインです。

 追跡期間が2年にも満たないためまだまだ未知数ですが、オシメルチニブ単剤療法と比べるとプラチナ併用化学療法を上乗せした分だけ相応の有害事象を覚悟しなければならないのは間違いありません。

 その不利益を補って余りある有効性が今後示されるのか、興味深いところです。

 

 

 

A phase II study of osimertinib in combination with platinum plus pemetrexed in patients with EGFR-mutated, advanced non–small cell lung cancer: The OPAL study (NEJ032C/LOGIK1801).

 

Nakamura et al.
ASCO2022, abst.#9097
DOI: 10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.9097

 

背景:
 第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブ(OSI)は、EGFR遺伝子変異陽性未治療進行非小細胞肺がんに対する標準治療のひとつである。一方、2つの第III相ランダム化比較試験において、同じ治療対象に対してゲフィチニブ単剤療法よりもゲフィチニブ+プラチナ併用化学療法の方が統計学的有意に、しかも臨床的意義のある無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)延長効果を示した。こうした背景を踏まえ、オシメルチニブ+プラチナ併用化学療法の安全性と有効性を検討する第II相試験を計画した。

 

対象患者と方法:
 今回の多施設共同第II相試験では、IIIB / IIIC / IVA / IVB / 術後再発のEGFR遺伝子変異陽性未治療非小細胞肺がん患者を対象とした。対象者はオシメルチニブ80mg/日連日内服に加え、シスプラチン75mg/㎡+ペメトレキセド500mg/㎡併用療法を3週間ごとに4コース(A群)、あるいはオシメルチニブ80mg/日連日内服に加え、カルボプラチン5AUC+ペメトレキセド500mg/㎡併用療法を3週間ごとに4コース(B群)施行した。A群、B群いずれの治療を適用するかは、担当医の判断に委ねることにした。両群ともにオシメルチニブ80mg/日連日内服とペメトレキセド500mg/㎡、3週間ごとの維持療法を、病勢進行もしくは他の理由による治療中止となるまで継続することとした。主要評価項目は安全性と奏効割合(ORR)とし、副次評価項目には完全奏効割合(CRR)、病勢コントロール割合(DCR)、PFSを含めた。

 

結果:
 2019年07月から2020年02月までに、計67人(A群34人、B群33人)を集積した。年齢中央値は67歳(26-75)、43人(64.2%)は女性、ECOG-PS0は46人(68.7%)、腺がんは66人(98.5%)、31人(46.3%)はEGFRエクソン19欠失変異、35人(52.2%)はEGFRエクソン21L858R点変異、1人(1.5%)はエクソン19/21の共変異を有していた。適格基準を満たしていない患者が1人だけ登録後に発覚したため、有効性評価対象から除外した。2021年08月31日のデータカットオフ時点で、A群15人(44.1%)、B群12人(36.4%)、計27人(40.3%)の患者がプロトコール治療を中止していた。このうち有害事象による治療中止は、A群5人(14.7%)、B群4人(12.1%)、計9人(13.4%)に上った。Grade 3以上の有害事象を経験した患者は91.0%(A群88.2%、B群93.9%)だった。A群 / B群において、Grade3以上の好中球減少は29.4% / 60.6%、貧血は14.7% / 27.3%、血小板減少は0% / 42.4%、QTc延長は14.7% / 21.2%、Grade2以上の食欲不振は26.5% / 24.2%で認めた。ORRはA群90.9%(95%信頼区間81.1-100)、B群90.9%(95%信頼区間81.1-100)、全体では90.9%(95%信頼区間84.0-97.8)だった。CRRはA群0%、B群6.1%(95%信頼区間0-14.2)、全体では3.0%(95%信頼区間0-7.2)だった。DCRはA群100%(95%信頼区間100-100)、B群93.9%(95%信頼区間85.8-100)、全体では97.0%(95%信頼区間92.8-100)だった。追跡期間中央値は21.4ヶ月(18.2-25.7)で、PFSは両群ともに中央値に至らず、全体の1年PFS割合は90.4%、2年PFS割合は70.0%だった。同様にOSも両群ともに中央値に至らず、全体の1年OS割合は96.9%、2年OS割合は92.3%だった。

 

結論:
 EGFR遺伝子変異陽性未治療進行非小細胞肺がん患者に対するオシメルチニブ+プラチナ併用化学療法は優れた効果と忍容可能な毒性を示した。本治療は非常に有望で、第III相試験で検証されるべきである。