・第III相LASER301試験・・・Lazertinib

 lazertinibという薬は、CHRYSALIS-2試験のときにも登場した、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬です。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 この記事の中で紹介した、オシメルチニブ耐性化後のlazertinib+amivantamab+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法の有効性と安全性を検証する第III相試験は、2023/07/11時点で患者集積が終了しているようです。

臨床研究等提出・公開システム (niph.go.jp)

 

 こうして開発の経緯を見ていくと、lazertinibの目指すところはオシメルチニブ耐性化後に絞られているように見えますが、今回紹介するLASER301試験では、FLAURA試験と同様のコンセプトで、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんを対象に、ゲフィチニブに対する優越性が証明されています。本試験では、ゲフィチニブ群において耐性化後にlazertinibに治療を切り替えることが許されていますので、最終的に全生存期間で有意差がつかなくても、十分に意義のある結果だと思います。オシメルチニブとlazertinibのhead to headの勝負を見てみたい気もしますが、優越性を証明するのは難しいでしょうね。

 

 

 

Lazertinib Versus Gefitinib as First-line Treatment in Patients With EGFR-mutated Advanced Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC): Results From LASER301

 

Byoung Chul Cho et al.
J Clin Oncol 2023
DOI: 10.1200/JCO.23.00515

 

目的:

 lazeritinibは中枢神経系への移行性に優れる第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬である。今回の国際共同第III相臨床試験(LASER301試験)では、EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失変異 / エクソン21L858R変異)陽性の局所進行もしくは進行非小細胞肺がん患者を対象に、lazertinibとゲフィチニブを比較した。

 

方法:

 18歳以上で、がん薬物療法既往のない患者を対象とした。中枢神経系への転移があっても、神経学的に病状が安定している患者は参加可能とした。対象患者をlazertinib群(lazertinib240mgを1日1回服用)とゲフィチニブ群(ゲフィチニブ250mgを1日1回服用)に1:1の割合で無作為割り付けした。割り付け調整因子は遺伝子変異タイプと人種とした。主要評価項目は担当医評価によるRECIST1.1準拠の無増悪生存期間(PFS)とした。

 

結果:

 13か国、96医療機関から、計393人(lazertinib群196人、ゲフィチニブ群197人)の患者が本試験に参加しプロトコール治療を受けた。各群ともに66%をアジア人が占め、約25%に中枢神経系への転移を伴っていた。今回の解析時点までの追跡期間中央値はlazertinib群で20.5ヶ月、ゲフィチニブ群で20.6ヶ月だった。PFS中央値はlazertinib群で有意に延長した(lazertinib群20.6ヶ月(95%信頼区間17.8-26.1) vs  ゲフィチニブ群9.7ヶ月(95%信頼区間9.2-11.3)、ハザード比0.45(95%信頼区間0.34-0.58)、p<0.001)。サブグループ解析を行ったところ、どの背景因子で比較してもPFSはlazeritnib群で有意に良好だった。代表的なサブグループ解析のハザード比を挙げると、アジア人で0.46(95%信頼区間0.34-0.63)、非アジア人で0.38(95%信頼区間0.23-0.64)、中枢神経転移ありで0.42(95%信頼区間0.26-0.68)、中枢神経転移なしで0.44(95%信頼区間0.32-0.60)だった。奏効割合は両群ともに76%だった(オッズ比0.99、95%信頼区間0.62-1.59)。奏効持続期間中央値はlazertinib群で19.4ヶ月(95%信頼区間16.6-24.9)、ゲフィチニブ群8.3ヶ月(95%信頼区間6.9-10.9)だった。中間解析時点での全生存期間に関するデータは不十分(イベント発生割合29%)だった。18ヶ月生存割合はlazertinib群で80%、ゲフィチニブ群で72%だった(ハザード比0.74、95%信頼区間0.51-1.08、p=0.116)。有害事象の主なものは、lazertinib群では異常知覚(39%)、皮疹(36%)、掻痒感(27%)、下痢(26%)で、ゲフィチニブ群では下痢(39%)、皮疹(37%)、ALT上昇(30%)、AST上昇(26%)だった。Grade 3以上の有害事象はlazertinib群の41%、ゲフィチニブ群の43%で認めた。治療中止を余儀なくされた有害事象はlazertinib群10%、ゲフィチニブ群9%だった。間質性肺疾患による治療関連死は、lazertinib群で1人認めた。

 

結論:

 lazertinibはゲフィチニブと比較して、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者の初回治療として使用すると有意に有効性が高く、毒性も管理可能であった。