・第III相FLAURA2試験・・・EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する、オシメルチニブ+ペメトレキセド+プラチナ併用療法

 

 オシメルチニブ単剤療法は、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんの初回治療として本当にベストなのか。

 以前、そうした切り口で記事を書きました。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 無増悪生存期間中央値、全生存期間中央値はオシメルチニブ単剤で18.9ヶ月、38.6ヶ月、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法で20.9ヶ月、50.9ヶ月、エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法で16.9ヶ月、50.7ヶ月と示されています。

 一方、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法の有効性を検証したRELAY試験において、無増悪生存期間中央値は19.4ヶ月と示されています。日本人サブセット解析でも同じ結果でした。

Ramucirumab Plus Erlotinib Versus Placebo Plus Erlotinib in Patients With Untreated Metastatic EGFR-Mutated NSCLC: RELAY Japanese Subset - JTO Clinical and Research Reports (jtocrr.org)

 一方、全生存期間のデータはいまだ示されていないため、上記治療群と同列に扱うことはできません。イーライリリー社のHPから読み取れる限り、2023年05月時点ではまだ全生存期間解析結果を提示できる見通しはついていないようです。

≪肺癌:EGFR 遺伝子変異陽性≫サイラムザ(ラムシルマブ)の臨床試験であるRELAY試験(パートB)におけるOSは? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社 (lillymedical.jp)

 

 こうした背景があるため、オシメルチニブ+ペメトレキセド+プラチナ併用化学療法には、少なくとも生存期間中央値で50ヶ月を超える生存期間延長効果を期待したくなります。無増悪生存期間中央値は25-30ヶ月程度と既存治療と比べて有望で、期待が膨らみます。3年後が楽しみです。

 

 

 

 

Osimertinib With/Without Platinum-Based Chemotherapy as First-line Treatment in Patients with EGFRm Advanced NSCLC (FLAURA2)

 

P. Janne et al.

WCLC2023 abst.#PL03.13

WCLC 2023 - PL03Plenary Session 3: Presidential Symposium (LIVESTREAMED) (abstractsonline.com)

 

背景:

 中枢神経病変にも有効な第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるオシメルチニブは、EGFR-TKI感受性変異とT790M耐性変異を強力かつ選択的に阻害する。第III相FLAURA試験において、比較対象となったEGFR-TKIに対して優れたPFS/OS延長効果を示したことで、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する初回治療としてオシメルチニブは好んで使用されている。しかし、ほとんどの患者は最終的に病勢進行に至る。第1世代のEGFR-TKIと化学療法を併用することにより、それぞれの単独治療よりも優れた効果が示されたが、オシメルチニブと化学療法の併用についてはこれまでのところ無作為化比較試験で検証されていない。FLAURA2試験は、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者を対象に、初回治療としてオシメルチニブ+化学療法併用療法とオシメルチニブ単剤療法の有効性と安全性を評価する国際共同第III相オープンラベル無作為化比較試験である。

 

方法:

 18歳以上(日本では20歳以上)、病理学的確定診断された非小細胞非扁平上皮がん、EGFRエクソン19欠失変異 / エクソン21L858R変異のいずれかを有する、WHO-PS 0-1、進行非小細胞肺がんに対する薬物療法歴がない患者を対象とし、中枢神経病巣があっても病状が安定していれば組み入れ可とした。対象患者は併用群と単剤群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。併用群ではオシメルチニブ80mg/日を1日1回内服に加え、ペメトレキセド 500mg/㎡とシスプラチン75mg/㎡もしくはカルボプラチン5AUCの併用療法を3週間ごと4コース行い、その後はオシメルチニブ80mg/日を1日1回内服に加え、ペメトレキセド 500mg/㎡を3週間ごとに、病勢進行に至るか治療中止基準に抵触するまで継続した。単剤群ではオシメルチニブ80mg/日を1日1回内服し、病勢進行に至るか治療中止基準に抵触するまで継続した。層別化因子は人種(中国系アジア人 vs 非中国系アジア人 vs 非アジア人)、EGFR遺伝子変異検出法(各医療機関での判定 vs 中央判定)、WHO-PS(0 vs 1)とした。主要評価項目はRECIST準拠、担当医判定による無増悪生存期間(PFS)とし、副次評価項目には全生存期間(OS)、奏効割合(ORR)、CTCAEver.5.5準拠の安全性を含めた。データカットオフは2023/04/03とした。

 

結果:

 557人の患者が無作為割付された(併用群279人、単剤群278人)。両群間の背景因子はバランスがとれていた。併用群 vs 単剤群の年齢中央値は61歳(26-83) vs 62歳(30-85)、女性は62% vs 61%、アジア人は64% vs 63%、EGFRエクソン19欠失変異は61% vs 60%、EGFRエクソン21L858R変異は38% vs 38%、中枢神経病変ありは42% vs 40%だった。主要評価項目である担当医判定PFS追跡期間中央値は併用群で22.2ヶ月(0-33.1)、単剤群で23.7ヶ月(0-33.1)で、担当医判定PFSは併用群で有意に延長し(ハザード比0.62、95%信頼区間0.49-0.79、p<0.0001、イベント達成率51%)、中央値は併用群で25.5ヶ月(95%信頼区間24.7-未到達)、単剤群で16.7ヶ月(95%信頼区間14.1-21.3)、2年PFS割合は併用群で57%、単剤群で41%だった。同様に中央判定PFS追跡期間中央値は併用群で22.1ヶ月(0-33.1)、単剤群で22.0ヶ月(0-33.2)だったが、中央判定PFSも併用群で有意に延長し(ハザード比0.62、95%信頼区間0.48-0.80、p=0.0002)、中央値は併用群で29.4ヶ月(95%信頼区間25.1-未到達)、単剤群で19.9ヶ月(95%信頼区間16.6-25.3)、2年PFS割合は併用群で62%、単剤群で47%だった。担当医判定による奏効割合は併用群83%、単剤群76%だった。併用群におけるペメトレキセド使用期間中央値は8.3ヶ月(1-34)で、76%の患者は4コースのペメトレキセド+プラチナ製剤併用療法を完遂した。概ねどのサブグループにおいても、併用群でPFSが良好な傾向が見られた。OSに関するイベントは27%とまだ少なく、カットオフ時点でのハザード比は0.90(95%信頼区間0.65-1.24、p=0.5238)だった。併用群 vs 単剤群において、Grade 3以上の有害事象は64% vs 27%、オシメルチニブ中止に至る有害事象は11% vs 6%だった。

 

結論:

 オシメルチニブ単剤と比較して、オシメルチニブ+化学療法併用は統計学的有意に、臨床的意義のあるPFS延長を示し、管理可能な安全性プロファイルを示した。オシメルチニブ+ペメトレキセド+プラチナ製剤併用療法が、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する初回治療の新たな選択肢となることを支持する結果だった。