・HERTHENA-Lung02試験:EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するHER3-DXdの効果は?

 

 次世代の殺細胞性抗腫瘍薬として、抗体薬物複合体の開発が盛んです。

 ことに、トポイソメラーゼI阻害薬と、特異抗体への接着剤となるリンカーを結合させたDeruxtecanを各種特異抗体にくっつけたものが話題に上ります。

 今回は、EGFRと同様に細胞膜に存在する受容体であるHER3を認識する特異抗体、ヒト抗HER3抗体とDeruxtecan8分子が結合したPatritumab Deruxtecan(HER3-DXd)をEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対して使用する第III相試験、HERTHENA-Lung02試験について取り上げます。

 

 取り上げますとはいっても、単にHERTHENA-Lung02試験が進行中、患者募集中であると紹介するだけで、有効性が証明されたというわけではありません。

 ただ、第I相試験の結果は既に以下の論文で公表されています。

 オシメルチニブ、プラチナ併用化学療法のいずれも施行済みのEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さん44人に対してHER3-DXdを使用したところ、奏効割合は39%(95%信頼区間26.0-52.4)、無増悪生存期間中央値は8.2ヶ月(95%信頼区間4.4-8.3)だったそうです。

 

Efficacy and Safety of Patritumab Deruxtecan (HER3-DXd) in EGFR Inhibitor-Resistant, EGFR-Mutated Non-Small Cell Lung Cancer

Pasi A Jänne et at.
Cancer Discov. 2022 Jan;12(1):74-89. 
doi: 10.1158/2159-8290.CD-21-0715. Epub 2021 Sep 21.

 

 

 この結果を踏まえて企画されたのが、HERTHENA-Lung試験です。

 

HERTHENA-Lung01試験:

 オシメルチニブを含む第3世代EGFR阻害薬とプラチナ併用化学療法治療歴があり病勢進行に至ったEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞非扁平上皮肺がん患者さんを対象に、HER3-DXd単剤療法の有効性と安全性を検証する国際共同オープンラベル第II相試験

 

HERTHENA-Lung02試験:

 オシメルチニブを含む第3世代EGFR阻害薬治療歴があり病勢進行に至ったEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞非扁平上皮肺がん患者さんを対象に、HER3-DXd治療群とプラチナ+ペメトレキセド併用療法群に1:1の割合で無作為割付し、主要評価項目として無増悪生存期間を、副次評価項目として全生存期間を評価する第III相試験

 

 要は、HERTHENA-Lung01試験は、第3世代EGFR阻害薬とプラチナ併用化学療法を終えた患者さんの三次治療としてHER3-DXdが食い込めるかどうかを見極めるための第II相試験で、HERTHENA-Lung02試験は第3世代EGFR阻害薬を終えた患者さんに対する二次治療としてプラチナ併用化学療法とHER3-DXd単剤のどちらがよいのかを見極めるための試験、ということになります。

 第3世代EGFR阻害薬を使用中の患者さんのお話を伺っていると、できればプラチナ併用化学療法は受けたくない、という声がしばしば聞こえてきます。

 HER3-DXdの有効性・安全性のバランスが優れていれば、十分に需要はあると思います。