・EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に耐性化した後のニボルマブ単剤療法

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 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の効果は期待できません。

 大規模臨床試験のサブグループ解析結果や、小規模な臨床試験の結果から判断する限り、考慮すべき治療は以下の2つです。

・カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法

・カルボプラチン+ペメトレキセド+ペンブロリズマブ併用療法

 

 今回紹介する臨床試験では、化学療法に対してニボルマブ単剤療法が無増悪生存期間や奏効割合で劣り、全生存期間は同等、という結果が示されました。

 少なくとも、ニボルマブ単剤療法が優れるという結論にはなりませんでした。

 それから患者背景を見ていて気になったのですが、化学療法歴のない患者さんを集めているにもかかわらず、本試験参加までに参加者が経験した治療レジメン数の中央値はなんと4レジメン、最高で9レジメンとあります。

 ・・・いったい、どんな前治療歴なんでしょう・・・。

 

 

 

 

 A rP2 study comparing Nivo with CBDCA-PEM for EGFRm NSCLC acquired TKI-resistance not due to T790M (WJOG8515L)

 

A.Nakamura et al., JSMO 2022, Abst.#O6-4

 

目的:
 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬既治療の患者を対象に、ニボルマブと化学療法の有効性を検証するランダム化比較試験を行った。

 

方法:
 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者で、化学療法歴がなく、T790M変異以外でEGFR-TKI耐性獲得に至った者(パターン1:第1・第2世代EGFR-TKI初回治療後にT790M変異以外で耐性化した者、パターン2:T790M変異陽性者に第3世代EGFR-TKIを使用したのちに耐性化した者、パターン3:初回治療で第3世代EGFR-TKIを使用したのちに耐性化した者)を対象とした。対象者をニボルマブ単剤療法群(N群:n=52)とカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法群(CP群:n=50)に1:1の割合で無作為割り付けした。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とした。

 

結果:
 2016年04月から2019年06月の期間で患者を集積した。PFS中央値と1年無増悪生存割合は、N群で1.7ヶ月(95%信頼区間1.3-2.3)、9.6%で、CP群で5.6ヶ月(95%信頼区間3.2-6.8)、14.0%だった(log-rank testでp=0.008、ハザード比1.92(60%信頼区間1.61-2.29、95%信頼区間1.27-2.90))。全生存期間はN群20.7ヶ月(95%信頼区間15.2-28.0)、CP群19.9ヶ月(95%信頼区間12.2-27.6)で、ハザード比は0.88(95%信頼区間0.53-1.47、p=0.517)、奏効割合はN群9.6%、CP群36.0%、病勢進行割合はN群57.7%、CP群24%、奏効持続期間中央値はN群5.3ヶ月(95%信頼区間4.6-未到達)、CP群5.5ヶ月(95%信頼区間2.9-8.0)だった。サブグループ解析では、TMB(tumor mutatnion burden)高値を含めて、N群でPFSが有意に良好となるような因子はなかった。T細胞性炎症関連遺伝子発現スコアが高い患者(0.11 vs -0.17、p=0.036)、細胞障害性T細胞関連遺伝子発現が高い患者では、ニボルマブの有効性が高かった。

 

結論:
 カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法と比較して、ニボルマブ単剤療法はPFS延長効果を示さなかった。

 

座長からのコメント:

・今回の結果から、EGFR-TKI耐性化後の標準治療は化学療法ということでよいのか

・PD-L1>50%であれば、本来は免疫チェックポイント阻害薬単剤を標準治療としてよいはずだが、なぜ今回はニボルマブ単剤の有効性が示されなかったのか

・今後の治療開発は、化学療法に免疫チェックポイント阻害薬を上乗せするか否かを軸に考えてよいか

・IMpower150試験ではEGFR遺伝子変異陽性患者におけるカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法の有効性が示唆されていたが、今回の結果との相違をどう考えるか

・「進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するカルボプラチン+ペメトレキセド+アテゾリズマブ療法とカルボプラチン+ペメトレキセド+アテゾリズマブ+ベバシズマブ療法の多施設共同オープンラベル無作為化第III相比較試験医師主導治験(WJOG11218L/APPLE試験)」の結果から、EGFR-TKI耐性化後の患者に対する化学療法+抗VEGF抗体+免疫チェックポイント阻害薬併用療法の意義が明らかになるかも知れない

 

 

 

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