・EGFR-TKI治療で病勢増悪後のABCP療法の第II相試験

 EGFR-TKI治療後に病勢進行に至った患者に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド(ABCP)療法の第II相試験です。

 効果が同等なら、がん薬物療法はシンプルな方が患者さんにも担当医にも負担が少ない、と考えがちな私にとっては、苦手な4剤同時併用てんこ盛り治療の臨床試験ですが、効果は高いようです。

 さてさて、第III相臨床試験で再現できるかどうか、乞うご期待です。

 

 

380MO - A phase II trial of atezolizumab, bevacizumab, pemetrexed and carboplatin combination for metastatic EGFR-mutated NSCLC after TKI failure

 

Tai Chung Lam, et al., ESMO Asia 2020

 

背景:

 チロシンキナーゼ阻害薬に対する獲得耐性はEGFR遺伝子変異陽性進行肺がんにおける重要な未解決問題である。今回の臨床試験では、こうした背景をもつアジア人患者集団で、抗VEGF抗体+免疫チェックポイント阻害薬+プラチナ併用化学療法の有効性を検証した。

 

方法:

 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者で、少なくとも1種類のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療後に病勢進行に至った患者を対象とした。T790M耐性変異を有する患者においては、オシメルチニブ使用後に放射線画像診断で進行が確認されていることを参加条件とした。アテゾリズマブ(1200mg / body)+ベバシズマブ(7.5mg / kg)+ペメトレキセド(500mg / ?)+カルボプラチン(AUC 5)を3週間ごとに病勢進行に至るまで継続した。評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、全生存期間とした。

 

結果:

 40人の患者が組み入れられた。年齢中央値は62歳で、半数以上(57.5%)の患者がオシメルチニブ投与後の病勢進行を経験していた。治療開始前の段階で、病状の安定している脳転移を有する患者が22.5%に及んだ。PD-L1発現が1%未満だった患者は52.5%だった。追跡期間中央値は11.0ヶ月で、奏効割合は62.5%だった。無増悪生存期間中央値は9.43ヶ月(95%信頼区間は7.62-12.1ヶ月)だった。プロトコール治療中に病勢進行に至った31人の患者において、11人は中枢神経系病変の増悪のみが病勢進行の原因だった。生存期間中央値は未到達で、1年生存割合は72.5%だった。Grade 3以上の治療関連有害事象は、37.5%におよび、1人だけプロトコール治療が中止となった、7人(17.5%)は治療薬の減量が必要となり、1人(2.5%)は心筋梗塞合併のために死亡した。Grade 2の高血圧は、27.5%の患者で認められた。2人は無症候性の肺動脈血栓塞栓症を合併していた。深部静脈血栓症を合併した患者も1人いた。こうした3人の患者においては、血栓症の治療が終了したのちにプロトコール治療を再開した。免疫関連有害事象は32.5%の患者で出現した。Grade 3の一過性の肝機能障害を来した1人、Grade 4の多発神経炎を合併した1人を除けば、全ての免疫関連有害事象はGrade 1-2のマイルドな甲状腺機能低下症もしくは亢進症と、副腎皮質ホルモンの分泌障害だった。

 

結論:

 ABCP療法は、チロシンキナーゼ耐性化後にEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんの病勢が進行した場合の治療として、有望な結果を残した。