・髄膜癌腫症で病勢進行した日本人EGFR遺伝子変異陽性肺がんに、オシメルチニブはどの程度効くのか

 

 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対し、オシメルチニブが初回治療で用いられるようになってからというもの、T790M耐性変異の有無を調べる、という機会が失われているように感じます。

 髄膜癌腫症に対するオシメルチニブの有効性を研究について調べてみているのですが、どれをとっても古典的なEGFRチロシンキナーゼ阻害薬使用後に髄膜癌腫症を起こして病勢進行した患者さんに対するオシメルチニブの効果を検証したものばかりです。

 

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 

 オシメルチニブを初回治療で使用した場合、髄膜癌腫症を合併したらどうすればいいのでしょう。

 今回紹介する研究報告を読みながら、病勢進行のためにオシメルチニブを中止した患者さんがその後に髄膜癌腫症を発症した場合、脳脊髄液からT790M変異が確認されたら、オシメルチニブを再投与してみる、というアプローチは実地臨床として有用ではなかろうかと感じました。

 

 

 

Standard-dose osimertinib for refractory leptomeningeal metastases in T790M-positive EGFR-mutant non-small cell lung cancer

 

Shigeki Nanjo et al.
Br J Cancer. 2018 Jan;118(1):32-37. 
doi: 10.1038/bjc.2017.394. Epub 2017 Nov 30.

 

背景:

 前臨床試験や160mg/日の投与量で行われた臨床試験において、治療耐性の髄膜癌腫症に対するオシメルチニブ投与は有望な効果を示したが、標準投与量である80mg/日でどの程度効果が期待できるのかのデータは乏しい。

 

方法:

 古典的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬投与後に耐性化したT790M耐性変異陽性の患者で、髄膜癌腫症が疑われる患者を対象とした。

 

結果:

 13人(5人は髄膜癌腫症確定例、8人は髄膜癌腫症疑い例)の適格患者を調査した。確定例5人のうち、中枢神経系の内外どちらでもT790M耐性変異があった2人では、オシメルチニブは双方の病巣に対して有効で、脳脊髄液からはT790M耐性変異の有無を問わず腫瘍細胞が一掃された。確定例5人のうち、中枢神経系の外部ではT790M耐性変異があるものの中枢神経系ではT790M耐性変異が無い3人では、脳脊髄液中のがん細胞やEGFR感受性変異遺伝子はオシメルチニブ開始後も残存していた。13人全員を対象として解析した無増悪生存期間中央値は7.2ヶ月だった。オシメルチニブはPS不良の患者においても安全に使用できたが、grade 2の間質性肺障害が1人発生した。13人の患者から採取した25件の脳脊髄液サンプルを解析したところ、オシメルチニブの脳脊髄液移行率は2.5±0.3%だった。

 

結論:

 古典的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬投与後に耐性化し、髄膜癌腫症を合併したT790M耐性変異陽性の患者において、80mg/日のオシメルチニブは有効な治療だった。脳脊髄液中にT790M耐性変異が確認された患者ではさらに有効性が高かった。