・METエクソン14スキップ変異陽性アジア人非小細胞肺がん患者に対するテポチニブの効果

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 METエクソン14スキップ変異陽性アジア人非小細胞肺がん患者に対するテポチニブの効果についての報告です。

 タイトルを考えていて思いましたが、患者さんの背景を説明する修飾語は、年々長くなる一方ですね。

 テポチニブが薬事承認されて随分たちますが、まだこの遺伝子変異が見いだされ、テポチニブを使用している患者を見たことはありません。

 METエクソン14スキップ変異の認知と検査実施が、足元ではあまり進んでいないように思われてなりません。

 

 

 

383MO - Tepotinib in Asian patients (pts) with advanced NSCLC with MET exon 14 (METex14) skipping

 

James Chih-Hsin Yang et al., ESMO Asia 2020

 

背景:

 METエクソン14スキップ変異を有する進行非小細胞肺がんに対して持続的な効果を示した、1日1回服用で高い選択性と潜在能力を有するMET阻害薬であるテポチニブは、日本で薬事承認(2020/03/25)された。

https://www.merckgroup.com/jp-ja/press/mbj/2020/200325_News_Release_Tepotinib-Japan-Approval_JP.pdf

 第II相VISION試験では、奏効割合は独立効果判定委員会評価で44.5-47.4%、担当医評価では54.7-58.3%だった。ほとんどの患者で、腫瘍縮小効果は治療開始から6週間以内に観察された。今回は、アジア人患者集団における治療効果について報告する。

 

方法:

 組織生検もしくはリキッドバイオプシーでEGFR遺伝子変異陰性、ALK融合遺伝子陰性、METエクソン14スキップ変異陽性と診断された進行非小細胞肺がん患者を対象とし、テポチニブ500mgを経口投与した。病勢進行、忍容不能の毒性、本人意思による治療の中止のいずれかに至るまでは治療を継続した。主要評価項目は独立効果判定委員会評価による奏効割合(初回の奏効確認から4週間以上空けて再度奏効が確認された場合を奏効確定例とする)とした。副次評価項目は担当医評価による奏効割合、奏効持続期間、無増悪生存期間、安全性とした。

 

結果:

 2020年1月1日のデータカットオフ時点で、効果判定可能だったアジア人患者は38人だった。年齢中央値は70歳(52-85歳)、32%が女性で、39%が非喫煙者、32%は過去に治療歴がない患者だった。国別の内訳は、日本が50%、韓国が26%、台湾が13%、スペインが3%、米国が8%だった。アジア人患者に対するテポチニブの有効性は全体集団と同様で、独立効果判定員会評価による奏効割合は47.4%(95%信頼区間は31.0-64.2%)だった。担当医評価による奏効割合は60.5%(95%信頼区間は43.4%-76.0%)だった。独立効果判定員会評価による奏効持続期間は未到達、担当医評価による奏効持続期間は10.9ヶ月(95%信頼区間は9.7ヶ月-未到達)だった。病勢コントロール割合(完全奏効、部分奏効もしくは病勢安定の状態が12週間以上持続した患者の割合)は独立効果判定員会評価で68.4%(95%信頼区間は51.3-82.5%)、担当医評価で81.6%(95%信頼区間は65.7-92.3%)だった。いまだデータは不十分だが、無増悪生存期間中央値は11.0ヶ月(95%信頼区間は4.9ヶ月-未到達)だった。まだ効果判定時期に至っていない患者も含めると、全体で50人のアジア人が少なくとも1回のテポチニブ内服投与を受けていた。主な有害事象は末梢浮腫、血清クレアチニン上昇、下痢だった。Grade 3以上の治療関連有害事象は患者の26%に認められた。治療関連有害事象のうち、投与量減量が必要だったのは28%、一時的な治療中断が必要だったのは36%、治療中止に至ったのは10%だった。

 

結論:

 テポチニブはMETエクソン14スキップ変異陽性のアジア人非小細胞がん患者に対して、確たる持続的な臨床効果を示した。有害事象はおしなべてマイルドかつ管理可能で、治療中止に至る割合はわずかだった。VISION試験は最終的に、アジア人を55人組み入れる予定となっている。