・EGFRエクソン20挿入変異とpoziotinib・・・ZENITH20試験コホート1の中間解析

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 EGFR遺伝子エクソン20挿入変異に対するpoziotinibの治療効果に関する報告です。

 奏効割合はEGFRチロシンキナーゼ前治療歴がある患者さんでは7%、ない患者さんでは17%。

 無増悪生存期間は4ヶ月です。

 既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬よりは優れているのかもしれませんが、なかなか厳しい結果で、残念ながら有望というにはほど遠いです。

 

 

 

Poziotinib Shows Mixed Findings in Exon 20-Mutant NSCLC

OncLive

Audrey Sternberg

Published: Monday, Apr 27, 2020

一部改変

 

 ZENITH20試験の中間解析の結果、EGFRエクソン20挿入変異陽性の既治療非小細胞肺がん患者に対し、poziotinibは68.7%(79/115)の病勢コントロール率を達成した。2020年AACR年次総会で報告された。本試験では4つのコホートが設定されており、今回は既治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者を対象としたコホート1の解析結果に基づいている。

 本結果をオンラインで報告したXiuning Le博士によると、効果は治療開始後比較的早い段階で現れ、投与量の減量や投与中断が必要だった患者ほどpoziotinibの効果が長期にわたり保たれた。サブグループ解析では、前治療の内容によらず、奏効割合はほぼかわらなかった。これは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の前治療歴についても同じことがいえた。

 患者背景に着目すると、総じてコホート1の患者は若く(年齢中央値は61歳)、女性が多く(67%)、白色人種が多く(67%)、非喫煙者が多かった(69%)。ほとんどの患者の組織型は腺がん(98%)で、病期はIV期(91%)で、脳転移を合併していなかった(90%)。前治療歴が1レジメンの患者は43%、2レジメンは25%、3レジメン以上は32%だった。75%の患者はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬未使用だった。

 主要評価項目である奏効割合は治療を受けた患者の奏効割合の95%信頼区間の下限が17%以上であった場合に、主要評価項目が達成されると定義されていた。奏効割合は14.8%(17/115)(95%信頼区間は8.9%から22.6%)だったため、上記の主要評価項目は達成できなかったものの、腫瘍が縮小した患者の数は115人中75人(65%)に達していた。

 事前に行われたMDアンダーソンがんセンターで行われた単施設での臨床試験では、濃厚な治療歴のあるEGFR陽性非小細胞肺がんやEGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象として、奏効割合が43%に達していた。今回の結果はこれを再現することはできなかった。

 前治療別に奏効割合を見ていくと、1レジメンのみの患者では14.3%、2レジメンの患者では13.8%、3レジメン以上の患者では16.2%だった。他の背景に沿った奏効割合は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬治療歴のある患者では6.9%、ない患者では17.4%、脳転移のある患者では8.3%、ない患者では15.5%、ECOG-PS0の患者では18.9%だった。

 奏効持続期間中央値は7.4ヶ月(95%信頼区間は3.7-9.7ヶ月)だった。無増悪生存期間中央値は4.2ヶ月(95%信頼区間は3.7-6.6ヶ月)だった。既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を用いたとき、EGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がん患者の無増悪生存期間中央値は2ヶ月程度とされており、今回の結果はpoziotinibの有用性を示唆している。

 poziotinibは16mg/日の開始量で投与されたものの、68%の患者で減量を要した。16mg/日を既定量としたときのdose intensityは72%で、平均投与量は11.5mg/日だった。

 poziotinibの休薬は97人(88%)の患者で行われた。休薬期間中央値は16日間だった。治療関連有害事象により、投与中止を余儀なくされたのは全体の10%だった。

 114人の患者でなんらかの有害事象を認めた。下痢(79%)、発疹(60%)、胃炎(52%)、爪周囲炎(45%)が主だった有害事象で、Grade3以上の有害事象で10%以上の発現率を示したものは、下痢(25%)と発疹(28%)だった。治療関連死は認めなかった。

 現時点で複数のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬がEGFR遺伝子変異陽性肺がんに対して使用可能となっているが、こうした患者の10%を占めるEGFRエクソン20挿入変異陽性の患者に対してFDAが承認したものはない。他のEGFR遺伝子変異と比べて、エクソン20挿入変異は他の変異とは異なるEGFRの構造変化をもたらすとされている。すなわち、エクソン20挿入変異はEGFR蛋白のATP結合ポケットの活性表面を狭く、小さく改変し、これが既存のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性をもたらしていると考えられている。poziotinibはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の中でも小さくコンパクトな構造であり、エクソン20挿入変異を有するEGFR蛋白にも結合可能であるとされる。

 本試験には、既存の4コホートに加えて、さらに3コホートが設定された。そのうちコホート6では、オシメルチニブによる初回治療後に病勢進行に至ったEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者を対象としている。