・EGFRエクソン20挿入変異とTAK-788

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 EGFR遺伝子変異のうち約6%を占めるとされるEGFRエクソン20挿入変異は、EGFR遺伝子変異とはいいながら、実際にはEGFR遺伝子変異陰性とほぼ同義でした。

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の効果がほぼ期待できないからです。

 

 2019年の米国臨床腫瘍学会で、EGFRエクソン20挿入変異に特化したEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるTAK-788についての報告がありました。

 まだまだ実用化には時間がかかりそうな印象でした。

 

 

 

 Antitumor activity of TAK-788 in NSCLC with EGFR exon 20 insertions.

 Jänne PA, et al. ASCO 2019 Abst.#9007

 

目的 :

 EGFRエクソン20挿入変異を有する進行非小細胞肺がん患者を対象に、TAK-788を投与した場合の有効性および安全性を検討した

 

方法 :

 EGFRエクソン20挿入変異を有する進行非小細胞肺がん患者(第I相用量漸増コホートから6人、第II相拡大コホートから22人)を対象とした。

 第I相:用量漸増コホート(3+3デザイン)、対象は進行非小細胞肺がん患者

 第II相:拡大コホート(遺伝子異常等で分類した複数のコホート)、今回の解析対象は既治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がん患者 

 主要評価項目:有効性で、EGFRエクソン20挿入変異陽性患者の奏効割合で評価 

 副次評価項目:安全性:第I相および第II相でTAK-788を投与された全ての患者で評価

 

結果:

 EGFRエクソン20挿入変異の対象患者は28人。

 年齢中央値62歳、女性が75%、白人が71%、アジア人18%、腺がん96%。

 前治療としてEGFR阻害薬を使用した患者は18%、免疫チェックポイント阻害薬を使用した患者は61%。

 脳転移があった患者は43%。

 EGFRエクソン20挿入変異の患者における奏効割合は43%、病勢コントロール割合は86%、無増悪生存期間中央値は7.3ヶ月。

 そのうち、脳転移があった患者では奏効割合は25%、病勢コントロール割合は67%、無増悪生存期間中央値は3.7ヶ月。

 脳転移がなかった患者では奏効割合は56%、病勢コントロール割合は100%、無増悪生存期間中央値は8.1ヶ月。

 全く腫瘍縮小効果が得られなかった患者はたった1人。

 主な有害事象は消化器症状と皮膚障害だった。