・EGFRエクソン20挿入変異とCLN-081

 EGFRエクソン20挿入変異に対する新たな薬、CLN-081の報告です。

 開発段階としてはまだ早期の段階ではありますが、amivantamabに比肩する有効性を示しているような印象を受けます。

 CLN-081は米国のカリナン・オンコロジー社が開発した薬で、2022/05/12付で大鵬薬品工業が一部権益を取得した模様です。

20220512.pdf (taiho.co.jp)

 

 

 

Phase (Ph) 1/2a study of CLN-081 in patients (pts) with NSCLC with EGFR exon 20 insertion mutations (Ins20).

 

Helena Alexandra Yu et al.

ASCO 2022, abst.#9007

DOI:10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.9007

 

背景:

 EGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんは、歴史的に見ても治療開発が難しい肺がんである。EGFRエクソン20挿入変異を治療標的とした新規薬剤が最近薬事承認されたが、有害事象、とりわけ野生型EGFRの機能に関連した有害事象を伴うのが一般的である。CLN-081は新規のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であり、エクソン20挿入変異を含むEGFR遺伝子変異に対して広く阻害活性をもち、野生型EGFRに比してエクソン20挿入変異陽性EGFRへの選択性が高められている。CLN-081はEGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんの治療薬として、米国食品医薬品局の画期的医薬品指定(break through therapy designation)を受けている。今回は、EGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がん患者を対象にCLN-081を使用する最初の多施設共同第I / IIa相試験の最新結果について報告する。今回の報告対象には、CLN-081を1回100mg、1日2回服用する拡大コホートの39人についての報告も含む。

 

方法:

 CLN-081の第I相用量漸増試験ではaccelerated titration(AT)とrolling six designを採用した。各コホートは事前に規定されたプロトコール基準に基づき、第I相部分、第IIa相部分で拡大された。対象患者は、プラチナ併用化学療法の前治療歴があることが条件とされた。病状が安定している既治療の脳転移を有する患者は適格とした。CLN-081は21日を1コースとして投与された。

 

結果:

 2021/12/13までに、73人の患者が登録された。年齢中央値65歳(36-82)、前治療レジメン数中央値2レジメン(1-9)、脳転移既往あり28人(39%)だった。CLN-081の1回使用量の詳細は、全て1日2回の服用として30mgが8人、45mgが1人、65mgが14人、100mgが39人、150mgが11人だった。全体の15%以上に認められた治療関連有害事象は、皮疹74%、下痢27%、爪囲炎25%、倦怠感19%、貧血18%、皮膚乾燥18%、嘔気16%だった。全体の4%以上に認められたgrade3以上の治療関連有害事象は、貧血10%、ALT上昇4%、AST上昇4%だった。grade3の皮疹を1人、grade3の下痢を2人に認めたが、全てCLN-081の1回投与量が150mgの患者だった。全体を通して、有害事象のために投与量減量が必要だったのは10人(14%)、治療中止が必要だったのは5人(7%)だった。治療効果の評価が可能だった70人全体を評価したところ、奏効確定25人(36%)、病勢安定34人(49%)、最良総合効果が病勢進行だったのは3人(4%)だった。未確定の奏効患者が7人(10%)、1人(1%)は効果判定の画像診断が延期されていた。1回投与量100mgの患者集団36人に限定すると、奏効確定14人(39%)、病勢安定17人(47%)、病勢進行1人(3%)だった。未確定の奏効患者が3人(8%)、1人(3%)は効果判定の画像診断が延期されていた。特記すべきことに、第I相試験において1回投与量100mgで、長期的な追跡調査が可能な患者集団(13人)の奏効持続期間中央値(mDoR)は15ヶ月超、無増悪生存期間中央値(mPFS)は12ヶ月だった。病勢コントロール割合(全体のうち、病勢安定もしくは奏効状態が6ヶ月以上持続していること)12 / 13(92%)だった。

 

結論:

 濃厚な治療歴を有するEGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対しCLN-081を使用したところ、管理可能な安全性プロファイルと投与量レベル全体にわたっての抗腫瘍活性を示した。さらに、CLN-081は1回100mg1日2回の投与量で、有望な奏効割合、奏効持続性を示し、grade3の皮疹や下痢を伴わなかった。

 

 

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