・EGFRエクソン20陽性肺がんに対するAmivantamabで進行が止まることの意義

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 第II相臨床試験では奏効割合が主要評価項目とされることが多く、腫瘍がそれほど縮小せず、またそれほど増大もしない、病勢安定という状態についてはあまり注目されません。

 今回の報告は、病勢安定にもちゃんと意味があるんだよ、ということを示しています。

 単にAmivantamabの効果に関してだけではなく、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬で病勢安定しているときの治療の考え方についても示唆を与える報告のように思えてなりません。

 

 

 

Stable disease (SD) on amivantamab in post-platinum epidermal growth factor receptor (EGFR) Exon 20 insertion (Exon20ins) mutated non-small cell lung cancer (NSCLC): A response-based analysis

 

Nicolas Girard et al.
2022 European Lung Cancer Congress(ELCC) Abst.#19P

 

背景:
 EGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんは予後不良とされており、とりわけ標準治療としてのプラチナ併用化学療法施行後病勢進行に至ってからはその傾向が顕著である。AmivantamabはEGFRとMET双方に結合する抗体複合体であり、EGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんの治療薬として最近承認された。新規医薬品の腫瘍縮小効果を見るための単アーム試験は、典型的には完全奏効(CR)や部分奏効(PR)の評価を目的とするが、病勢安定(SD)の患者における予後改善効果も臨床的には興味深い。総合最良効果がSDで、かつamivantamabによる治療で12週間病勢進行を認めなかった患者における予後評価を行った。

 

方法:
 今回の検討では、プラチナ併用化学療法施行後病勢進行に至ったEGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんの患者で、CHRYSALIS試験に参加した114人の患者について解析した(データカットオフは2021/03/30)。腫瘍縮小効果は、RECIST ver1.1に基づいて、独立効果判定委員会が行った。Amivantamab投与開始から12週間経過時点での腫瘍縮小効果により、患者をPR+(CR+PR)群、SD群、PD群の3群に分類した。無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)をKaplan-Meyer法を用いて各群ごとに評価し、Cox比例ハザードモデルを用いて各群間のハザード比とその95%信頼区間を解析した。

 

結果:
 Amivantamab開始から12週間時点で生存していた患者は107人で、PR+群42人(39%)、SD群52人(49%)、PD群13人(12%)だった。PFS中央値はPR+群で12.2ヶ月(95%信頼区間6.7-16.4)、SD群で7.0ヶ月(95%信頼区間5.5-10.8)、PD群1.4ヶ月(1.4-1.7)で、SD群に対するPR+群のハザード比は0.55(95%信頼区間0.33-0.94、p=0.03)だった。全生存期間に関し、PD群に対するPR+群のハザード比は0.21(95%信頼区間0.08-0.54、p=0.001)、SD群のハザード比は0.33(95%信頼区間0.14-0.77、p=0.011)だった。生存期間中央値はPR+群で未到達(95%信頼区間18.5-未到達)、SD群で23.0ヶ月(95%信頼区間17.5-未到達)、PD群で14.0ヶ月(95%信頼区間6.6-未到達)だった。

 

結論:
 Amivantamabによる予後改善効果はPR+群のみならずSD群でも認められ、PD群に対する死亡リスク逓減効果はSD群で67%、PR+群で79%だった。Amivantamabによる腫瘍縮小効果のみならず、病勢コントロール効果も予後改善に寄与することが示された。