・第III相MALIPOSA試験・・・進行EGFR肺がん一次治療におけるamivantamabとlazertinibの有効性

 

 2023年の欧州臨床腫瘍学会年次総会では、EGFRとMETに対する二重特異性モノクローナル抗体であるamivantamabの話題が多かったようです。

 今回は、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対し、amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるlazertinibを併用し、オシメルチニブ単剤療法を超えられるか、というコンセプトです。

 少なくとも、amivantamabとlazertinibを併用することでオシメルチニブよりPFSを延長できる、というコンセプトは明らかになりました。

 しかし、あえて言うなら、amivantamabとオシメルチニブを併用したらどうなのか、というところも見てみたいですね。

 単剤でもよし、プラチナ併用化学療法と併用でもよし、術後補助療法でもよし、となれば、治療を提供する側としてはまずオシメルチニブありきで、そこに患者さんの病態に合わせてどんなオプションを加えていくか、という拵えにした方がわかりやすいですね。

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬を開発している他の製薬会社さんに叱られそうですけれども。

 また、全生存曲線を見ると、当初12ヶ月はamivantamab+lazertinibよりもオシメルチニブの方が勝っているように見えます。

 その背景になにがあるのか、amivantamabあるいはlazertinibの毒性が何か関わっているのか、興味があります。

 

 

 

LBA14 - Amivantamab plus lazertinib vs osimertinib as first-line treatment in patients with EGFR-mutated, advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): Primary results from MARIPOSA, a phase III, global, randomized, controlled trial

 

B.C. Cho et al. ESMO Congress 2023 abst.#LBA14
Annals of Oncology (2023) 34 (suppl_2): S1254-S1335. 
10.1016/annonc/annonc1358

 

背景:

 免疫細胞誘導活性をもつ、EGFRとMETの二重特異性モノクローナル抗体であるamivantamab(ami)と、中枢神経系移行性を示す第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるlazertinib(laz)は、第I相試験において抗腫瘍活性を示した。今回のMALIPOSA試験では、一次治療におけるami+laz併用療法とオシメルチニブ(osi)単剤療法について比較試験を行った。

 

方法:

 治療歴のないEGFR遺伝子変異(エクソン19欠失変異もしくはエクソン21L858R点突然変異)陽性の局所進行もしくは進行非小細胞肺がん患者を対象とし、ami+laz併用療法群、osi単剤療法群、laz単剤療法群に2:2:1の割合で無作為に割り付けた。層別化因子はEGFR遺伝子変異の種類(エクソン19欠失変異 vs エクソン21L858R点突然変異)、人種(アジア人 vs それ以外)、脳転移既往(あり vs なし)とした。4週間を1コースとし、amiは当初4週間は毎週1回、以後は2週間に1回、1,050mg(体重80㎏以上の患者では1,400mg)を投与した。osiは80mgを連日、lazは240mgを連日投与した。主要評価項目は独立委員会判定によるami+laz群とosi群を対象とした無増悪生存期間(PFS)とした。副次評価項目には全生存期間(OS)、奏効割合(ORR)、奏効持続期間(DoR)、二次治療開始後のPFS(PFS2)、安全性とした。中枢神経系の定期モニタリングが義務付けられた。

 

結果:

 1,074人の患者が無作為割付された(ami+laz群429人、osi群429人、laz群216人)。背景因子のバランスはとれていた。年齢中央値は63歳、62%が女性、59%がアジア人、41%が脳転移合併歴を有していた。追跡期間中央値22.0ヶ月の時点で、ami+laz群はosi群に対してPFSイベント(病勢増悪あるいは死亡)リスクを30%逓減した(ハザード比0.70、95%信頼区間0.58-0.85、p<0.001)。PFS中央値はami+laz群で23.7ヶ月(95%信頼区間19.1-27.7)、osi群で16.6ヶ月(95%信頼区間14.8-18.5)だった。12ヶ月PFS割合はami+laz群73%、osi群65%、24ヶ月PFS割合はami+laz群48%、osi群34%だった。脳転移既往のある患者に限ると、PFS中央値はamivantamab併用群18.3ヶ月、オシメルチニブ群13.0ヶ月、ハザード比0.69(95%信頼区0.53-0.92)だった。ORRはami+laz群で86%(95%信頼区間83-89)、osi群で85%(95%信頼区間81-88)、奏効確定患者におけるDoR中央値はami+laz群で25.8ヶ月(95%信頼区間20.1-未到達)、osi群16.8ヶ月(95%信頼区間14.8-18.5)だった。PFS2のデータは未成熟だが、ハザード比0.75(95%信頼区間0.58-0.98)と、ami+laz群で有望そうだった。中間解析時点におけるOSは、osi群よりami+laz群が優れる傾向が見られた(ハザード比0.80、95%信頼区間0.61-1.05、p=0.1)。24ヶ月OS割合は、ami+laz群74%、osi群69%だった。EGFRやMETに関連した有害事象はami+laz群でより多かったが、下痢についてはosi群の方が多かった。ami+laz群で静脈血栓塞栓症が増加していたがそのほとんどはgrade 1-2相当で、治療開始早期から出現し(≒予測、対処しやすく)、抗凝固療法で効果的に管理可能だった。薬剤性肺障害の頻度は低く、両群間で同等だった。治療関連死はami+laz群で8%、osi群で7%だった。

 

結論:

 osiと比較して、ami+laz併用療法は統計学的有意に、かつ臨床的にも意義のあるPFS改善をもたらし、DoRの点でも優れており、OSでも有望な兆しを認めた。ami+lazの安全性は既報と同様だった。MALIPOSA試験はEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんにおける新たな一次治療としてのami+lazの意義を確立した。