・第III相PAPILLON試験・・・EGFRエクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対するamivantamab+カルボプラチン+ペメトレキセド

 

 EGFRとMETに対する二重特異性モノクローナル抗体であるamivantamab、カルボプラチン+ペメトレキセドと併用することでEGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がんの初回治療としての有効性が第III相PAPILLON試験で証明されました。amivantamabを上乗せすることで無増悪生存期間が約5ヶ月延長しました。全生存期間中央値はまだ推定不能ながら、少なくとも24ヶ月は確実に超えてきそうです。

 EGFRエクソン20挿入変異は多様性に富むため、次世代シーケンサーでないと効率良く検出できない、というのも今回の結果とともに大切な点です。

 薬事承認申請の際には、コンパニオン診断についても適切に並行申請していただきたいものです。

 

Amivantamab plus Chemotherapy in NSCLC with EGFR Exon 20 Insertions

 

Caicun Zhou et al.
N Engl J Med. 2023 Oct 21. 
doi: 10.1056/NEJMoa2306441. 
Online ahead of print.

 

背景:

 プラチナ併用化学療法施行中あるいは施行後に病勢進行に至ったEGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がん患者に対する治療薬として、amivantamabは既に薬事承認されている。第I臨床試験において、amivantamabとカルボプラチンおよびペメトレキセド併用療法の安全性と抗腫瘍活性が示されている。この組み合わせの治療について、更なる臨床データが必要である。

 

方法:

 今回の第III相国際共同無作為化比較試験において、EGFRエクソン20挿入変異陽性の未治療進行非小細胞肺がん患者を対象に、amivantamab+化学療法(AC)群と化学療法単独(C)群に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は独立委員会判定による無増悪生存期間(PFS)とした。C群患者の病勢進行が確認された後は、amivantamab単剤療法へとクロスオーバーできることとした。

 

結果:

 308人の患者が無作為割付された(AC群153人、C群155人)。PFSはAC群で有意に延長していた(PFS中央値はAC群11.4ヶ月(95%信頼区間9.8-13.7)、C群6.7ヶ月(95%信頼区間5.6-7.3)、ハザード比0.40(95%信頼区間0.30-0.53)、p<0.001)。18ヶ月PFS割合はAC群31%、C群3%だった。データカットオフ時点での奏効割合はAC群73%(95%信頼区間65-80)、C群47%(95%信頼区間39-56)だった。中間解析時点での生存イベント発生割合は33%とまだ時期尚早ではあったが、生存期間中央値はAC群未到達、C群24.4ヶ月(95%信頼区間22.1-未到達)、ハザード比0.67(95%信頼区間0.42-1.09、p=0.11)だった。AC群における主要な有害事象は可逆的な血液毒性とEGFR関連症状で、有害事象のために7%の患者がamivantamabを中止した。

 

結論:

 EGFRエクソン20挿入変異陽性の未治療進行非小細胞肺がん患者に対する初回治療としてのamivantamab併用化学療法は、化学療法単独と比べて優れた効果を示した。

 

本文より:

エクソン20挿入変異は、EGFR遺伝子変異の形式としては3番目に多く、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの12%を占めるとする報告もある

・EGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がんに対しては既存の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の効果は期待できず、初回標準遅漏はプラチナ併用化学療法で、奏効割合は23-29%、無増悪生存期間中央値は3.4-6.9ヶ月である

・TKI感受性のEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんの生存期間中央値は38.6ヶ月程度だが、エクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がんでは16.2-24.3ヶ月に留まり、5年生存割合は8%程度である

・amivantamabはEGFRとMET(Mesenchymal-Epidermal Transition factor)の両方を認識する二重特異性抗体で、免疫担当細胞誘導活性を持つ

・受容体に結合することによる競合阻害作用(図中の⓵)、受容体結合後もろともに細胞内に取り込まれ分解されることで受容体密度を減らす作用、自らのFc部分を介してマクロファージ・単球による貪食を誘導する作用(②)、ナチュラルキラー細胞によるサイトカイン攻撃を誘導する作用(③)を示す

・第I相CHRYSALIS試験において、EGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がんに対するamivantamab単剤療法は奏効割合40%、奏効持続期間11.1ヶ月という成績を残し、これを以て薬事承認を受けた

・CHRYSALIS試験における無増悪生存期間中央値は8.3ヶ月、全生存期間中央値は22.8ヶ月だった

・今回の第III相PAPILLON試験で対象としたのは18歳以上のEGFRエクソン20挿入変異陽性未治療進行非小細胞肺がんで、短期間のEGFR-TKI治療歴はそれが無効であった場合には不問とした

・AC群もC群も、治療は1コース3週間を基本として行った

・AC群では最初の4週間はamivantamab1,400mg(体重80kg以上の患者では1,750mg)を毎週投与し、初回投与は2日間で分割投与(1日目は350mg、2日目に残り1,050mg)した

・3コース目開始時(7週目)にはamivantamabを1,750mg/回(体重80kg以上の患者では2,100mg/回)に増量し、3週間ごとに病勢進行に至るまで継続投与した

・カルボプラチンは5AUCで最高4コースまで3週間ごとに投与した

・ペメトレキセドは体表面積1平米あたり500mgを病勢進行に至るまで3週間ごとに継続投与した

・割付調整因子はECOG-PS、脳転移既往の有無、EGFR-TKI治療歴とした

有意水準0.05の両側検定で、90%の検出力でハザード比0.625の差を検出するために、少なくとも300人の患者で、200のPFSイベントが必要と算出した

・これは少なくとも3ヶ月のPFS中央値を延長することと同義で、それぞれのPFS中央値をC群5ヶ月、AC群8ヶ月と見積もった

・2023/05/03でデータカットオフとした

・2020年12月から2022年11月までに、計542人の患者がスクリーニングされ、308人が無作為割付された(AC群153人、A群155人)

・C群のうち、65人が病勢進行後の(プロトコール上の)後治療としてamivantamab単剤療法を受け、加えて6人がプロトコール外の治療としてamivantamab単剤療法を受けた

・腫瘍サイズの平均縮小率は、AC群で53%、C群で34%だった

・奏効持続期間中央値は、AC群9.7ヶ月(95%信頼くか8.2-13.5)、C群4.4ヶ月(95%信頼区間4.1-5.6)だった

・治療開始から奏効までの期間中央値は、AC群6.7週間(範囲5.1-72.5)、C群11.4週間(範囲5.1-60.2)

インフュージョン・リアクションはAC群で42%、C群で1%に認めた

・発熱性好中球減少症はAC群で3%、C群で2%に認めた

・grade 3以上の主な有害事象は、AC群では好中球減少(33%)、白血球減少(11%)、皮疹(11%)、C群では好中球減少(23%)、貧血(12%)、血小板減少(10%)だった

・AC群とC群において、有害事象のために治療延期を必要としたのは104人(69%) vs 56人(36%)、減量を必要としたのは73人(48%) vs 35人(23%)、治療中止に至ったのは36人(24%) vs 16人(10%)だった

・EGFRエクソン20挿入変異は多様性に富んでいるため、PCRベースの検査では50%程度しか診断できない

次世代シーケンサーによる検索なら、より検査感度をあげることができる