EGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がんに対するamivantamab+化学療法の有効性と安全性を検証した第III相PAPILLON試験について、以前以下の記事で触れました。
oitahaiganpractice.hatenablog.com
今回は、本試験の日本人サブグループ解析結果が日本臨床腫瘍学会で示されましたので、要旨を書き残します。
わずか34人の解析結果ですので結論じみたことは言えませんが、それでも無増悪生存期間については統計学的有意差が見てとれます。奏効割合にそれほど差が無いにも関わらず、これだけ大きな無増悪生存期間の差がついた、ということは、amivantamabという薬の特性なのかも知れません。・・・というか、化学療法群の奏効割合が良すぎる、というべきかもしれません。奏効割合は、全体集団では47%、日本人サブグループに至っては67%ですからね。
本試験結果を受けて、既にヤンセンファーマ株式会社は我が国でamivantamabの製造販売承認申請を済ませているようですし、そう遠くない将来に実地臨床で本治療ができるようになりそうです。
アミバンタマブ(遺伝子組換え)、EGFRエクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺癌に係る製造販売承認を申請 | Janssen Pharmaceutical K.K.
Amivantamab Plus Chemotherapy vs Chemotherapy Alone in EGFR Exon20ins NSCLC: Phase 3 PAPILLON study Japanese subgroup
JSMO 2024 annual meeting Abst.#PS1-1
背景:
EGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がん患者を対象としたPAPPILLON試験において、amivantamab併用化学療法(ami-chemo群)は化学療法(chemo群)に対して有意に無増悪生存期間(PFS)を延長した(ハザード比0.40、95%信頼区間0.30-0.53、p<0.001)。今回は、日本人サブグループの解析をした。
方法:
治療歴のない患者を1:1の割合でami-chemo群とchemo群に割り付けた。主要評価項目は独立委員会評価によるPFSとした。副次評価項目には奏効割合(ORR)、次治療後のPFS(PFS2)、全生存期間(OS)、安全性とした。chemo群が病勢進行に至ったときに、amicantamab単剤へのクロスオーバーを許可した。今回の解析では、生物統計的な解析は行わなかった。
結果:
総数308人(ami-chemo群153人、chemo群155人)のうち、34人(ami-chemo群19人、chemo群15人)が日本人だった。日本人の中では、ami-chemo群の21%、chemo群の33%が治療開始前に脳転移を合併していた。追跡期間中央値ami-chemo群15.6ヶ月、chemo群20.1ヶ月の時点で、PFS中央値はami-chemo群15.5ヶ月(95%信頼区間8.0-未到達)vs chemo群5.6ヶ月(95%信頼区間3.0-7.0)だった(ハザード比0.22、95%信頼区間0.09-0.53)。ORRはami-chemo群72.2%(95%信頼区間46.5-90.3)vs chemo群66.7%(95%信頼区間38.4-88.2)だった(オッズ比1.3、95%信頼区間0.29-5.76)。頻度の高かった有害事象は、ami-chemo群では好中球減少、爪周囲炎、白血球減少、食欲不振、便秘、末梢浮腫、貧血、血小板減少、胃炎、ALT/AST上昇、ニキビ様皮疹だった。新たに認められた有害事象はなかった。
結論:
PAPPILON試験の日本人サブグループにおけるamivantamab併用化学療法の有効性は、全体集団同様に認められた。amivantamab併用化学療法は忍容性もよく、安全性に関する新たな懸念事項はなかった。今回の解析結果は、日本人のEGFRエクソン20挿入変異陽性進行非小細胞肺がん患者に対する新たな初回標準治療としての位置づけを支持している。