・CheckMate816試験、幻の術前ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の評価は?

 

 実家の庭のサクランボの花が咲いていました。

 サクラの開花も、もうすぐです。

 母が最後のニボルマブ+イピリムマブ併用療法を受けたのが2021年05月でしたから、あと2ヶ月で3年を迎えます。

 

 術前薬物療法について検証したCheckMate816試験、ニボルマブ+化学療法の有効性が確認できた、というのが結論ですけれど、ひっそりと日陰に押しやられたニボルマブ+イピリムマブ併用療法の探索的報告が為されていました。

 なんとなく有用そうな治療ではありますけど・・・おそらく製薬会社の意向で、今以上には開発が進まないでしょうね。

 

 

 

 

1261O - Neoadjuvant nivolumab (N) + ipilimumab (I) vs chemotherapy (C) in the phase III CheckMate 816 trial

 

M.M. Awad et al.

ESMO Congress 2023 abst.#1261O

Annals of Oncology (2023) 34 (suppl_2): S732-S745. 10.1016/annonc/annonc1304

 

背景:

 第III相CheckMate 816試験において、切除可能非小細胞肺がん患者を対象に、両主要評価項目、すなわち無イベント生存期間(EFS)と病理学的完全奏効割合(pCR)の両方について、ニボルマブ+化学療法併用(N+C)は化学療法単独(C)と比較して、統計学的有意かつ臨床的意義のある改善を達成した。N+Cの無イベント生存期間延長効果は長期にわたり続いている。今回は、同時にランダム割り付けされていたニボルマブ+イピリムマブ(N+I)併用療法と化学療法の比較について、探索的検討を行った。

 

方法:

 stage IB(腫瘍径40mm以上)-IIIA(AJCC第7版準拠)の切除可能非小細胞肺がん成人患者で、ECOG-PSは0もしくは1、EGFRやALKの遺伝子異常を伴っていない者を対象に、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごと3コース、イピリムマブは1mg/kgを1コースのみ投与するN+I群と、3週間ごとに既定の化学療法を3コース投与するC群に無作為割付した。外部の臨床試験結果を受けて、本試験の主要評価集団はN+C群 vs C群に変更され、N+I群への患者集積は早期に中止された。評価項目には、独立委員会判定によるEFS、pCR、全生存期間(OS)、手術成績、安全性、プロトコール治療開始前に採取した腫瘍標本のRNAシーケンス結果に基づき算出した4遺伝子(CD8A、STAT1、LAG3、CD274(PD-L1))炎症スコアと有効性の相関を含めた。

 

結果:

 同時期にランダム割付されたN+I群(113人)とC群(108人)において、患者背景に差異はなかった。49.2ヶ月の追跡期間中央値(2022/10/14時点でデータベース確定)の時点で、EFSとOSはN+I群でより優れる傾向にあった。EFS中央値はN+I群54.8ヶ月(95%信頼区間24.4-未到達) vs C群20.9ヶ月(95%信頼区間14.2-未到達)(ハザード比0.77、95%信頼区間0.51-1.15)、3年EFS割合はN+I群 56%(95%信頼区間46-65) vs C群44%(95%信頼区間33-54)だった。OS中央値はN+I群未到達(95%信頼区間56.5-未到達) vs C群未到達(95%信頼区間41.8-未到達)(ハザード比0.73、95%信頼区間0.47-1.14)、3年OS割合はN+I群73%(95%信頼区間63-80) vs C群61%(95%信頼区間51-70)だった。pCR割合(95%信頼区間)はN+I群で有意に高かった(N+I群20.4%(13.4-29.0) vs C群4.6%(1.5-10.5)、オッズ比5.14,(95%信頼区間1.91-13.80))。定型的手術はN+I群の74%、C群の76%で施行された。R0切除割合はN+I群80% vs C群71%だった。4遺伝子炎症スコアは、N+I群において有意にEFSとpCRを改善した。grade3-4の治療関連有害事象はN+I群14% vs C群36%、grade3-4の手術関連有害事象はN+I群15% vs C群14%に認めた。

 

結論:

 今回行ったCheckMate816試験の探索的解析で、術前薬物療法としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、術前化学療法と比較して臨床的有用性を秘めており、有害事象は管理可能であることが示された。とはいえ、既に報告されている通り、術前薬物療法としてはニボルマブ+化学療法併用が標準治療である。