・ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、PS良好なら年齢を問わずよさそう

 

 なんだかこのところ、肺がん薬物療法の話題と言えばニボルマブ+イピリムマブ併用療法ばかりを取り上げているような気がします。

 実母の治療経過に直結するのでどうしても興味が集中しがちです。

 年齢問わず、PS 0-1と良好ならニボルマブ+イピリムマブ併用療法はプラチナ併用化学療法より優れていそう、という知見です。

 途中で患者集積が中止された試験で、しかも中間解析時点での結果報告なのでどこまで真に受けるべきなのかは考えものですが、考えるヒントにはなるでしょう。

 

 

 

Randomized phase III study of nivolumab and ipilimumab versus carboplatin-based doublet in first-line treatment of PS 2 or elderly (≥ 70 years) patients with advanced non–small cell lung cancer (Energy-GFPC 06-2015 study).

 

Herve Lena et al.

ASCO2022 abst.#9011

DOI:10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.9011

 

背景:

 抗PD-L1抗体と抗CTLA4抗体の併用療法は、進行非小細胞肺がんの治療として化学療法より優れていることが示されたが、お年寄りやPS2の患者に対してのデータは乏しい。

 

方法:

 今回のeNErgy試験では、高齢者もしくはPS2の進行非小細胞肺がん患者を対象として、ニボルマブ+イピリムマブ併用(NI)療法とプラチナ併用化学(Pd)療法を比較した。主要評価項目は全生存期間で、副次評価項目は無増悪生存期間、奏効割合、安全性とした。主な適格基準は以下の通り。組織学的に確定診断されたIV期の非小細胞がん患者であること。70歳以上のPS 0-2の患者であるか、あるいは70歳未満のPS2の患者であること。EGFR / ALK / ROS1遺伝子異常がないこと。Pd療法施行可能な臓器機能が保たれていること。主な除外基準は以下の通り。活動性の脳転移巣があること。NI療法が禁忌であること。年齢(70歳以上 vs 70歳未満)、PS(0 / 1 vs 2)、組織型(扁平上皮がん vs それ以外)を割り付け調整因子として、1:1の割合で各治療群に対象患者を割り付けた。ニボルマブは240mgを2週ごと、イピリムマブは1mg/kgを6週ごとに投与し、病勢進行もしくは忍容不能の毒性出現まで継続した。プラチナ併用化学療法は最大4コースまで行うこととし、カルボプラチン5AUC3週ごと+ペメトレキセド500mg/㎡3週ごと、もしくはカルボプラチン5AUC4週ごと+パクリタキセル90mg/㎡を1日目、8日目、15日目で4週ごとのいずれかを行うこととした。全生存期間において、αエラー5%の両側検定、検出力85%のもと、ハザード比0.65の差を検出するために、242人の無作為割り付け登録が必要となった。

 

結果:

 174人の無作為割り付けされた患者のうち、33%の患者死亡イベントが発生した段階で、予定していた中間解析を実施した。とりわけPS2の患者を対象とした解析では、ハザード比1.8(95%信頼区間 0.99-3.3)と明らかにNI療法の成績が劣る傾向があり、試験継続はこうした患者にとって不利益となる可能性が高いと考えられた。そのため、患者集積は中止して、それまでに登録済みだった204人の患者については追跡調査を継続した。最後の患者が登録されてから18ヶ月経過した直近の解析では、男性71%、年齢中央値74歳(51-89)、PS 0は30%、PS1は37.5%、PS2は36.6%、現喫煙者25.5%、喫煙既往者64.4%、腺がん62%といった患者背景だった。全体の生存期間中央値は、NI療法で14.7ヶ月(95%信頼区間8.0-19.7)、Pd療法で9.9ヶ月(95%信頼区間7.7-12.3)、ハザード比0.85(95%信頼区間0.62-1.16)だった。高齢のPS 0-1の患者を対象としたサブグループ解析では、生存期間中央値はNI療法で22.6ヶ月(95%信頼区間18.1-36)、Pd療法で11.8ヶ月(95%信頼区間8.9-20.5)、p=0.02と有意にNI療法が優れていた。一方PS2の患者を対象としたサブグループ解析では、生存期間中央値はNI療法で2.9ヶ月(95%信頼区間1.4-4.8)、Pd療法で6.1ヶ月(95%信頼区間3.5-10.4)、p=0.22だった。全体集団の無増悪生存期間中央値はNI療法が有意に優れており、NI療法で5.5ヶ月(95%信頼区間2.8-8.7)、Pd療法で4.6ヶ月(95%信頼区間3.5-5.6)、p=0.015だった。安全性は両治療群で同等で、grade 3以上の重篤な有害事象はNI療法の31.4%、Pb療法の49.5%で認めた。毒性のために治療中止となったのは、NI療法で28.6%、Pb療法で22.3%だった。 

 

結論:

 今回対象とした患者集団全体では、NI療法の全生存期間延長効果は統計学的に証明できなかった。一方、PS0-1の高齢者においては、Pd療法よりもNI療法が有意に全生存期間を延長していた。