・第III相CheckMate743試験3年追跡データ・・・切除不能悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法

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 切除不能悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性を検討した第III相CheckMate743試験のことは、以下の記事で触れたことがあります。

 

・悪性胸膜中皮腫とニボルマブ+イピリムマブ併用療法 - 大分で肺癌診療 (hatenablog.com)

 

 今回、この試験の3年追跡結果が論文化されていましたので記事にしてみました。

 概要は以下に記載の通りですが、生存曲線を見る限り、非小細胞肺がんと同様に当初3ヶ月では化学療法群の方がよいようです。

 CheckMate-9LA試験コンセプトのように、当初3ヶ月をプラチナ製剤+ペメトレキセド+ニボルマブ+イピリムマブで凌いで、以後はニボルマブ+イピリムマブで維持する、という戦略が思い浮かびます。

 検索した限りでは、いまのところそうしたコンセプトの臨床試験は走っていないようです。

 

 

 

First-line nivolumab plus ipilimumab versus chemotherapy in patients with unresectable malignant pleural mesothelioma: 3-year outcomes from CheckMate 743 - Annals of Oncology

 

S. Peters et al., Ann Oncol February 02,2022
DOI:https://doi.org/10.1016/j.annonc.2022.01.074

 

背景:
 切除不能悪性胸膜中皮腫患者を対象とした第III相CheckMate743試験(NCT2899299)において、ニボルマブ+イピリブマブ併用療法による一次治療は化学療法と比較して有意に生存期間を延長した。今回は追跡期間3年経過時点での最新データを報告する。

 

方法:
 治療歴がなく、病理学的に確定診断された切除不能悪性胸膜中皮腫の患者で、ECOG-PSが1以下の患者を対象に、1:1の割合で以下の治療群に無作為割付した。


NI群:ニボルマブ(3mg/kgを2週間ごとに投与)+イピリムマブ(1mg/kgを6週間ごとに投与)を最長2年間継続
C群:プラチナ製剤とペメトレキセドの併用療法を最長6コース継続


 今回の報告では、有効性・安全性に関する最新データを提示し、加えて炎症反応に関連する4遺伝子の発現状態をもとにしたスコアリングシステムがバイオマーカーとして有効かどうかを調べる探索的解析と、治療関連有害事象によりプロトコール治療を中止した患者における有効性の後解析についても報告する。

 

結果:
 追跡期間中央値は43.1ヶ月、NI群は引き続き有意に生存期間を延長していた。生存期間中央値はNI群18.1ヶ月、C群14.1ヶ月、ハザード比0.73(95%信頼区間0.61-0.87)、3年生存割合はNI群23%、C群15%だった。3年無増悪生存割合はNI群で14%、C群で1%で、奏効割合はNI群で40%、C群で44%だった。いったん奏功した患者が3年経過時点でも奏効状態を維持している割合は、NI群で28%、C群で0%だった。C群に対するNI群の生存期間延長効果は、病理組織型を含む全てのサブグループ解析で同様に認められた。炎症関連4遺伝子の発現状態に基づいたスコアリングシステムの点数が高いと、NI群では予後良好な傾向が見られた。プロトコール治療終了後1年を経過しても、新たな有害事象は発生しなかった。NI群で有害事象のために治療を中止した患者では、生存期間中央値は25.4%で、奏効した患者のうち34%は治療中止後3年経過しても腫瘍縮小効果が維持されていた。

 

結論:
 3年間の追跡調査後も、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の生存期間延長効果は化学療法よりも優れていた。安全性プロファイルは十分に管理可能であり、病理組織型に関わらず本治療は切除不能悪性胸膜中皮腫の標準治療と考えてよい。

 

 なお、化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法に関する3件の大規模ランダム化第III相試験が進行中である。
・NCT03762018:BEAT-meso試験
 カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ+アテゾリズマブ
・NCT02784171:
 シスプラチン+ペメトレキセド+ペンブロリズマブ
・NCT04334759:DREAM3R試験
 プラチナ製剤+ペメトレキセド+デュルバルマブ