・RET肺がんに対するセルペルカチニブ・・・LIBRETTO-001試験の最新データ

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 RET融合遺伝子陽性既治療(プラチナ併用化学療法を含む3レジメン)進行肺腺がんの義父が、セルペルカチニブを飲み始めて3ヶ月以上経過しました。

 滑り出しはよかったものの、退院したとたんに過敏反応にさいなまれましたが、担当医の適切なご対応により現在は落ち着いて治療を続けているようです。

 セルペルカチニブの詳細は、以下のリンクで細かく取り上げました。

大分での肺がん診療:セルペルカチニブ、上市 (junglekouen.com)

 

 今回の発表では、患者数がさらに積み上げられるとともに、前回報告時よりも15ヶ月長く追跡調査をしたとのことです。

 治療歴があると、奏効割合こそやや劣るものの、生存期間データは未治療患者さんと比べてほぼ遜色なさそうです。

 また、今回の発表から、全生存期間に関する具体的なデータが出始めました。

 いまだに全生存期間は中央値に達していません。

 とはいえ、義父にはもう後治療の余地がないため、今回のデータよりは少し厳しめに予後を考えておかねばならないかなあと悩んでいます。

 

 

 

Durability of efficacy and safety with selpercatinib in patients (pts) with RET Fusion+ non-small cell lung cancer (NSCLC) 

 

Alexander Drilon et al.
2022 European Lung Cancer Congress(ELCC) Abst.#19P

 

背景:
 セルペルカチニブは、選択性が高く中枢神経病変にも有効な、RETキナーゼ阻害薬としては世界初の薬であり、RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの治療薬として複数の国で薬事承認されている。過去の報告では追跡期間が限られており、奏効持続期間や無増悪生存期間のデータはまだ途上にあった。

 

方法:
 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するセルペルカチニブ使用について評価したLIBRETTO-001試験の追跡調査を、前回の解析から15か月間の間隔を置いて行った。主要評価項目は独立効果判定委員会評価によるRECIST ver.1.1準拠の奏効割合で、副次評価項目は奏効持続期間、無増悪生存期間、臨床的有用割合(治療開始から16週間経過後のCR+PR+SD患者割合)、全生存期間、安全性とした。

 

結果:
 治療歴のない患者集団(naive群、69人)とプラチナ併用化学療法治療歴のある患者集団(chemo群、247人)に分けて解析した。両群ともに、追跡期間中央値は最長24ヶ月に達しているにもかかわらず、依然として奏効持続期間や無増悪生存期間は中央値に達しなかった。全対象患者の中で、治療開始時点で中枢神経系に測定可能病変を有する患者が26人いた。追跡期間通凹地25.8ヶ月時点で、中枢神経系病変の奏効割合は84.6%(95%信頼区間65.1-95.6)、奏効持続期間中央値は9.4ヶ月(95%信頼区間7.4-15.3)だった。セルペルカチニブを1回でも使用した356人の患者を対象に安全性評価を行った。25%以上の患者で認められた有害事象はドライマウス、下痢、高血圧、ALT/AST上昇、末梢性浮腫、便秘、皮疹、頭痛、倦怠感だった。全体で34人(9.6%)の患者が有害事象のために、11人(3.1%)の患者が治療関連有害事象のために治療を中止した。

 

結論:
 追跡期間を延長し、新規組み入れ患者を積み上げた結果、セルペルカチニブは過去のがん薬物療法歴の有無に関わらず持続的な有効性と中枢神経系病変への活性を示した。ことに、中枢神経系病変に対する奏効割合85%、奏効持続期間9.4ヶ月、無増悪生存期間19.4%と、中枢神経系病変に対する有効性は高かった。LIBRETTO-001試験は現在もRET融合遺伝子陽性固形がん患者を対象に患者集積を継続している。また、国際共同ランダム化第III相LIBRETTO-431試験では、RET融合遺伝子陽性未治療進行非小細胞肺がん患者を対象に、セルペルカチニブと他の標準治療の無増悪生存期間を比較する予定である。