EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対し、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬使用後に病勢進行に至った際、有望な治療選択肢の一つにアテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法、いわゆるABCP療法(IMpower150療法)があります。
IMporew150試験において、EGFR遺伝子変異陽性サブグループ解析結果が有望だったことが報告されたことが端緒です。
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我が国では、前向き臨床試験であるNEJ-043試験でその有効性が検証されました。
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NEJ-043試験は単群第II相試験で、無増悪生存期間中央値7.4ヶ月、生存期間中央値18.9ヶ月の結果を残したわけですが、今回韓国で行われた第III相ATTLAS / KCSG-LU19-04試験では無増悪生存期間中央値8.5ヶ月、生存期間中央値20.6ヶ月と再現性のある結果が示されました。
サブグループ解析結果は両試験で相違するところもありますが、少なくとも本治療の有用性は十分に裏付けられたと考えていいのではないでしょうか。
A phase III, randomized study of atezolizumab plus bevacizumab and chemotherapy in patients with EGFR or ALK mutated in non-small cell lung cancer (ATTLAS, KCSG-LU19-04)
M. Ahn et al.
ESMO Congress 2023 abst.#LBA67
Annals of Oncology (2023) 34 (suppl_2): S1254-S1335.
10.1016/annonc/annonc1358
Sehhoon Park et al.
J Clin Oncol. 2023 Oct 20:JCO2301891.
doi: 10.1200/JCO.23.01891.
背景:
ドライバー遺伝子変異を有する非小細胞肺がんの治療において、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)使用後の抗PD-(L)1抗体の有用性は明らかになっていない。今回の無作為化オープンラベル多施設行動第III相試験において、EGFRもしくはALK遺伝子異常をもつ非小細胞肺がんでに対しTKI使用後に病勢進行に至った患者を対象に、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法の有効性を評価した。
方法:
対象患者にABCP療法(アテゾリズマブ+ベバシズマブ+パクリタキセル+カルボプラチン導入療法→アテゾリズマブ+ベバシズマブ維持療法)とPC療法(ペメトレキセド+カルボプラチンもしくはシスプラチン導入療法→ペメトレキセド維持療法)を適用し比較した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とした。
結果:
総計228人(EGFR遺伝子変異215人、ALK転座13人)が韓国国内16施設から登録され、ABCP群(154人):PC群(74人)に2:1の割合で無作為割付された。追跡期間中央値は26.1ヶ月(95%信頼区間24.7-78.2)だった。PFSはABCP群で有意に延長していた(中央値8.48ヶ月 vs 5.62ヶ月、ハザード比0.62(95%信頼区間0.45-0.86)、p=0.004)。PFS延長効果は、PD-L1高発現であるほど顕著だった(PD-L1≧1%ではハザード比0.47、PD-L1≧10%ではハザード比0.41、PD-L1≧50%ではハザード比0.24)。全生存期間は両群ともほぼ同等だった(中央値20.63ヶ月 vs 20.27ヶ月、ハザード比1.01(95%信頼区間0.69-1.46)、p=0.975)。奏効割合はABCP群で有意に良好だった(69.5% vs 41.9%、p<0.001)。ABCP療法の安全性は、過去の報告と同様だった。
結論:
EGFR / ALK遺伝子異常陽性で、各遺伝子異常に関連した分子標的薬を使用したのちに病勢進行に至った非小細胞肺がん患者に対し、抗PD-L1抗体+ベバシズマブ+化学療法の臨床的有用性を証明した第III相臨床試験は、本報告が初めてである。
その他本文より:
・臨床的有用性があれば、病勢進行後もアテゾリズマブを継続投与してよいこととする
・PC群における病勢進行後のアテゾリズマブ投与(クロスオーバー)は認めない
・導入療法を4コースするか6コースするかは、患者登録前に担当医が決定する
・サブグループ解析でABCP療法優勢だったのは以下
65歳未満、ハザード比0.64(0.42-0.97)
男性、ハザード比0.45(0.28-0.73)
PS1、ハザード比0.56(0.40-0.79)
喫煙歴あり、ハザード比0.53(0.31-0.93)
EGFR遺伝子変異あり、ハザード比0.60(0.43-0.84)
エクソン21L858R点突然変異あり、ハザード比0.52(0.31-0.88)
脳転移あり、ハザード比0.32(0.19-0.53)
既治療のEGFR-TKIが第1・2世代のみ、ハザード比0.46(0.29-0.73)
T790M耐性変異なし、ハザード比0.44(0.29-0.66)
・ABCP群におけるプロトコール後治療では、抗体薬物複合体(ADC)が6.4%、殺細胞性抗腫瘍薬(chemo)が44.7%、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が1.1%、TKIが20.2%で使用された
・PC群におけるプロトコール後治療では、ADCが10.9%、chemoが52.2%、ICIが26.1%、TKIが28.3%で使用された