・第III相APPLE試験・・・ABCPem療法はABCPac療法のようには行かず

 

 


 本ブログでは、幾度か進行非小細胞肺がん患者さんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法、いわゆるABCP療法について触れました。

 

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 しかし、ベバシズマブを含んだ治療である以上、主な治療対象は進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者であるはずで、だったら神経障害をはじめとして毒性の強いパクリタキセルよりも、より扱いやすく維持療法にも移行できるペメトレキセドではいけないのか、と考えるのは人情です。

 今回の第III相APPLE試験はパクリタキセルとペメトレキセドを比較するデザインではなく、アテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法、いわゆるIMpower132レジメンにベバシズマブを上乗せする意義があるかどうかを検証するデザインとなっていました。

大分での肺がん診療:IMpower132・・・KEYNOTE189には及ばず (junglekouen.com)

 

 結果的にパクリタキセルをペメトレキセドに置き換えることの優越性は証明できなかったのですが、ドライバー遺伝子異常を有するサブグループの解析では有望な結果が得られたのだとか。

 ATTLAS / KCSG-LU19-04試験同様に、ドライバー遺伝子異常とチロシンキナーゼ阻害薬治療歴を有する進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者さんを対象とし、ABCP療法を標準治療として、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの有効性を検証する第III相試験が行われると面白いと思うのですが・・・日本国内だけで対象患者さんを集めるのは大変でしょうね。

 

 

 

 

 

Atezolizumab and Platinum Plus Pemetrexed With or Without Bevacizumab for Metastatic Nonsquamous Non-Small Cell Lung Cancer: A Phase 3 Randomized Clinical Trial

 

Yoshimasa Shiraishi et al.
JAMA Oncol. 2023 Dec 21:e235258. 
doi: 10.1001/jamaoncol.2023.5258. 

 

本試験の意義:

 抗PD(L)-1抗体と化学療法の併用療法は進行非小細胞肺がんに対する標準治療である。ベバシズマブはVEGFにより惹起される免疫抑制を阻害することにより、化学療法だけでなく抗PD(L)-1抗体の効果も増強すると期待されているが、裏付けとなるデータが不足している。

 

本試験の目的:

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対し、プラチナ併用化学療法とアテゾリズマブに加えてベバシズマブを使用することの有効性と安全性を評価すること

 

本試験のデザイン、設定、参加者:

 本試験はオープンラベル第III相ランダム化臨床試験で、日本国内37施設で行った。進行非扁平上皮非小細胞肺がんで、ドライバー遺伝子異常がない、あるいはドライバー遺伝子異常はあるが少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害薬治療歴がある患者を対象とした。患者登録機関は2019/01/20から2020/08/12とした。

 

治療介入:

 登録された患者は、アテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用群(ACPem群)とアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ併用群(ABCPem群)に無作為に割り付けられた。4コースの導入治療後、ACPem群ではアテゾリズマブ+ペメトレキセド併用維持療法、ABCPem群ではアテゾリズマブ+ペメトレキセド+ベバシズマブ併用維持療法が適用され、病勢進行に至るか、忍容不能の毒性に至るか、プロトコール治療開始から2年間が経過するまで続けられた。

 

主要評価項目:

 Intention-to-treat解析による、独立委員会判定での無増悪生存期間(PFS)とした。

 

結果:

 総計412人の患者が登録され(273人(66%)は男性、年齢中央値は67.0歳(24-89))ABCPem群に205人、ACPem群に206人が無作為割り付けされた(1人はGCP規定違反で除外された)。PFS中央値はABCPem群9.6ヶ月、ACPem群7.7ヶ月、ハザード比0.86(95%信頼区間0.70-1.07)、片側log-rank検定でのp値=0.92だった。予め規定されていたサブグループ解析によると、ドライバー遺伝子異常陽性の患者集団では明らかにABCPem群がPFSにおいて優れていた(PFS中央値9.7ヶ月 vs 5.8ヶ月、ハザード比0.67(95%信頼区間0.46-0.98)。ベバシズマブに関連した毒性はABCPem群で増加していた。

 

結論:

 本試験では、非扁平上皮非小細胞肺がん患者において、ACPem療法に対するABCPem療法の優越性は証明できなかった。しかし、ドライバー遺伝子異常陽性の患者集団においては、ACPem療法よりもABCPem療法の方がPFSを改善していた。