・TASUKI-52試験・・・カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+ニボルマブ併用療法

 

 進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+ニボルマブ併用療法の有効性を検証したONO-4538-52/TASUKI-52試験。

 プラチナ併用化学療法+血管増殖因子阻害薬+免疫チェックポイント阻害薬という同様のコンセプトを検証した臨床試験として、IMpower150試験(カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブ)があります。

 TASUKI-52試験はドライバー遺伝子変異陽性の患者さんを対象としておらず、IMpower150試験は同患者さんを対象に含んでいる点が異なり、そのためドライバー遺伝子変異陽性患者さんが分子標的薬無効となった後の治療という文脈で、IMpower150試験が取りざたされることが多いです。

 TASUKI-52試験もIMpower150試験も、少なくとも無増悪生存期間延長効果という点ではカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法に免疫チェックポイント阻害薬を上乗せすることの意義を示したと言っていいでしょう。

 

大分での肺がん診療:ONO-4538-52/TASUKI-52試験 (junglekouen.com)

大分での肺がん診療:tasuki-52 trial 日本人サブグループ解析 (junglekouen.com)

 TASUKI-52試験については、上記のような記事で取り扱ったことがありますが、今回改めて論文を紹介しておきます。

 

 

 

Nivolumab with carboplatin, paclitaxel, and bevacizumab for first-line treatment of advanced nonsquamous non-small-cell lung cancer

 

S Sugawara et al.
Ann Oncol. 2021 Sep;32(9):1137-1147. 
doi: 10.1016/j.annonc.2021.06.004. Epub 2021 Jun 15.

 

背景:

 今回の第III相ランダム化二重盲検国際共同試験(ONO-4538-52 / TASUKI-52)では、非扁平上皮非小細胞肺がんに対し、殺細胞性化学療法+ベバシズマブ併用療法にニボルマブを上乗せすることの意義を検証した。

 

方法:

 2017年06月から2019年07月にかけて、未治療、IIIB / IV期もしくは術後再発、EGFR / ALK / ROS1遺伝子異常のない、非扁平上皮非小細胞肺がん患者を本試験に組み入れた。N群ではカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+ニボルマブ併用療法を3週ごとに6コース施行したのち、ベバシズマブ+ニボルマブ併用療法を病勢進行となるか忍容不能の毒性が出現するまで継続した。P群ではカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+プラセボ(偽薬)併用療法を3週ごとに6コース施行したのち、ベバシズマブ+プラセボ併用療法を病勢進行となるか忍容不能の毒性が出現するまで継続した。対象患者をN群とP群に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とし、独立放射線画像診断委員会による評価を行った。

 

結果:

 日本、韓国、台湾から550人の患者が参加し、無作為割付を受けた。N群に273人、P群に275人が割り付けられた。追跡期間中央値13.7ヶ月の段階で今回の中間解析を実施したところ、PFSはN群で有意に延長していた。(N群12.1ヶ月 vs P群8.1ヶ月、ハザード比0.56、96.4%信頼区間0.43-0.71、p<0.0001)。PFS延長効果は、PD-L1発現状態によらず、全ての患者において観察され、PD-L1陰性の患者も例外ではなかった。全生存期間中央値はN群25.4ヶ月(95%信頼区間21.8-未到達)、P群24.7ヶ月(95%信頼区間20.2-未到達)、ハザード比0.85(95%信頼区間0.63-1.14)、p値0.2754と有意差を認めなかったが、解析時点での死亡イベント発生はN群82人(29.8%)、P群93人(33.8%)で、結論を出せる段階ではなかった。奏効割合はN群61.5%(95%信頼区間55.4-67.2)、P群50.5%(95%信頼区間44.5-56.6)だった。病勢コントロール割合はN群87.3%(95%信頼区間82.7-91.0)、P群89.8%(95%信頼区間85.6-93.1)だった。grade 3-4の治療関連有害事象は両群とも同等だった。治療関連死はN群で5人、P群で4人発生した。

 

結論:

 カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+ニボルマブ併用療法は、未治療進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対し有効な新たな治療戦略として考慮されるべきである。