・第III相ACHILLES / TORG1834試験・・・uncommon EGFR変異陽性肺がんに対するアファチニブ

 

 いわゆるEGFR uncommon変異に対する一次治療として、アファチニブが良さそうですよ、という報告です。

 この事実自体は、以前から知られていました。

 

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 しかし、EGFR uncommon変異にはEGFR-TKIよりもプラチナ併用化学療法から治療を始めた方がよいとの報告もありました。

 

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 

 今回の報告は、きちんと第III相臨床試験で結論を出した、ということでとても意義深いものだと思います。

 少なくとも日本においては、uncommon EGFR遺伝子変異に対しては自信をもってアファチニブを使用しましょう、ということですね。

 

 

 

LBA66 - Afatinib versus chemotherapy for treatment-naïve non-small cell lung cancer with a sensitizing uncommon epidermal growth factor receptor mutation: A phase III study (ACHILLES/TORG1834)

 

S. Miura et al. 
ESMO Congress 2023 abst.#LBA66
Annals of Oncology (2023) 34 (suppl_2): S1254-S1335. 10.1016/annonc/annonc1358

 

背景

 EGFR遺伝子変異には多様性があり、エクソン19欠失変異やエクソン21L858R点突然変異以外のいわゆるuncommon変異の中にも、比較的高頻度に出現するものや、複数のEGFR遺伝子変異が共存する(compound変異)ものもある。これらの変異に対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が最適な治療法なのかどうかは結論が出ていない。今回は、感受性EGFRuncommon変異陽性非小細胞肺がん患者を対象に、アファチニブ単剤療法と化学療法を比較する第III相ACHILLES / TORG1834試験の結果について報告する。

 

方法:

 今回のオープンラベル第III相臨床試験では、未治療の感受性EGFRuncommon変異陽性非小細胞肺がん患者をアファチニブ群(A群:アファチニブ30-40mgを連日内服)とプラチナ併用化学療法群(P群:シスプラチン75mg/㎡またはカルボプラチン5-6AUCとペメトレキセド500mg/㎡、3週ごと、ペメトレキセドは適応があれば維持療法へ移行)に2:1の割合で無作為割付した。主要評価項目はRECIST 1.1準拠の無増悪生存期間(PFS)とした。αエラー=0.05、検出力75%でPFSのハザード比0.6を検出する設定として、必要患者数は106人と見積もった。

 

結果:

 2019年02月から2023年02月の期間に109人の患者が登録された。追跡期間中央値は12.5ヶ月だった。患者背景に偏りはなかった。PFS中央値はアファチニブ群で有意に延長していた(A群10.6ヶ月 vs P群5.7ヶ月、ハザード比0.422、95%信頼区間0.256-0.694、p=0.0007)。独立委員会は試験の早期終了を勧告した。1年無増悪生存割合はA群42.1% vs P群19.3%だった。奏効割合は両群で統計学的有意差はなく、A群61.4%、P群47.1%(p=0.2069)だった。grade3以上の治療関連有害事象はA群43.8%、P群37.1%だった。A群で頻度が高かった有害事象は下痢、皮疹、爪囲炎だった。A群で1人だけ、肺臓炎による治療関連死があった。

 

結論: 

 EGFRuncommon/compound変異陽性進行非小細胞肺がん患者に対する初回治療として、アファチニブはプラチナ併用化学療法より優れた成績を示した。