未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するエルロチニブと抗VEGF抗体の併用療法が、エルロチニブ単剤療法に対して無増悪生存期間を延長するというのは、ほぼ定説になったような感があります。
エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法しかり(JO15567試験、NEJ026試験)。
エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法しかり(RELAY試験)。
ことに最近では、EGFRエクソン21点突然変異陽性肺がんに対する治療効果向上に関して、エルロチニブ+抗VEGF抗体併用療法が取り上げられることが多くなりました。
今回取り上げるWJOG9717L試験は、未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対してオシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法が無増悪生存期間延長に寄与するかどうかというコンセプトについて検証した第II相臨床試験です。
少なくとも、全体として評価する限りでは顕著な効果は見られなかったようです。
一方サブグループ解析では、喫煙経験者とEGFRエクソン19欠失変異陽性者では、オシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法で無増悪生存期間が延長する傾向にあったのだとか。
EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺癌に対するオシメルチニブ+ベバシズマブ併用とオシメルチニブ単剤を比較するランダム化第2相試験; WJOG9717L
2022年日本臨床腫瘍学会総会、Abst.#O6-1
Randomized Phase 2 Study of Osimertinib Plus Bevacizumab Versus Osimertinib for Untreated Patients With Nonsquamous NSCLC Harboring EGFR Mutations: WJOG9717L Study
Hirotsugu Kenmotsu et al.
J Thorac Oncol. 2022 Sep;17(9):1098-1108.
doi: 10.1016/j.jtho.2022.05.006. Epub 2022 May 27.
背景:
オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性未治療非小細胞肺がんに対する標準治療である。これまでの研究から、EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対し、エルロチニブにVEGF阻害薬を上乗せすることで、無増悪生存期間が延長することが示された。今回のオープンラベルランダム化第II相試験では、EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象に、オシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法とオシメルチニブ併用療法を比較した。
方法:
症状を伴う脳転移のないEGFR遺伝子変異陽性未治療進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象とした。適格患者は以下の2群に無作為に割り付けられた。
OB群:オシメルチニブ80mg/日内服+ベバシズマブ15mg/kgを3週ごと点滴
O群:オシメルチニブ80mg/日内服のみ
割り付け調整因子は性別、病期、EGFR遺伝子変異の種類とした。
主要評価項目は効果判定委員会評価による無増悪生存期間(PFS)とした。
PFS中央値を、OB群で27カ月、O群で18ヶ月と仮定し、80%の検出率、20%のαエラーで必要患者数を算出、120人を集積することとした。患者集積期間を1.5年間、経過観察期間を2年間とした。
結果:
2018年1月から2018年9月までに、122人の患者が各治療群に割り付けられた(OB群61人、O群61人)。追跡期間中央値19.8ヶ月の段階で、PFS中央値はOB群で22.1ヶ月、O群で20.2ヶ月だった(ハザード比0.862、60%信頼区間0.700-1.060、95%信頼区間0.531-1.397、片側検定p=0.213)。サブグループ解析では、喫煙経験者(ハザード比0.48)、EGFRエクソン19欠失変異(ハザード比0.62)はOB群でPFSが延長する傾向にあった。奏効割合はOB群で82%、O群で86%だった。Grade 3-4の有害事象はOB群の34人(56%)、O群の29人(48%)に認めた。OB群の3%、O群の18%は肺臓炎を経験し、Grade 3相当の肺臓炎は各群1人ずつ見られた。
結論:
今回の研究では、症状を伴う脳転移のないEGFR遺伝子変異陽性未治療進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対するオシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法は、有効性を証明できなかった。
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今回の報告と同様、既治療EGFR遺伝子変異陽性肺腺がんに対しても、オシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法はあまり有効ではないようです。
oitahaiganpractice.hatenablog.com