・EGFRエクソン20挿入変異に対する、zipalertinibの第I / IIa相試験

 

 EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんに対する治療開発は、有効性を高める目的だけではなく、副作用を軽減する目的でも進められているんですね。

 使用量が多いほど効果が高まる一方で、副作用も増強するという内容は、どちらかというと分子標的薬というより殺細胞性抗腫瘍薬に近いです。

 zipalertinib(CLN-081、TAS6417)は以前も取り上げたことがあります。前回は2022年の米国臨床腫瘍学会年次総会からでしたが、今回は論文化されています。

 

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 当時からすると若干データが更新され、有効性データがさらに良くなっています。

 

 

 

Safety, Tolerability, and Antitumor Activity of Zipalertinib Among Patients With Non-Small-Cell Lung Cancer Harboring Epidermal Growth Factor Receptor Exon 20 Insertions

 

Zofia Piotrowska et al.
J Clin Oncol. 2023 Jun 29.
doi: 10.1200/JCO.23.00152.

 

目的:

 最近になって、EGFRエクソン20挿入変異(EGFRex20ins)を治療標的としたいくつか治療薬が米国食品医薬品局により適用承認されたが、野生型EGFRを阻害することに関連した毒性が見られる点が共通しており、治療忍容性に影響を与えている。zipalertinib(CLN-081、TAS6417)は経口服用型のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬で、新しいpyrrolopyrimidine残基によってEGFRex20insと野生型EGFRの選択性が高められており、EGFRex20ins陽性株の細胞増殖を阻害する。

 

方法:

 zipalertinibに関する今回の国際共同第I / IIa相試験では、EGFRex20inse陽性の術後再発あるいは進行非小細胞肺がん患者で、プラチナ併用化学療法を過去に受けたことのあるものを対象とした。

 

結果:

 2019年12月から2021年08月の期間に73人の患者が集積され、zipalertinibを30、45、60、100、150mgを1日2回経口服用した。女性が56%を占め、年齢中央値は64歳、誰もが濃厚な治療歴(がん薬物療法既往レジメン数中央値は2、範囲は1-9)を有していた。36%の患者はex20insを治療標的としていないEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の治療歴があり、73人中3人(4.1%)はex20insを治療標的としたEGFR-TKIの治療歴があった。23人の患者が1回65mg以下、39人が1回100mg(expansion cohort)、11人が1回150mgを服用した。1回150mgを服用した患者集団では、用量減量が必要となった患者が3人、治療中止が必要となった患者が3人発生し、さらには用量規定毒性が観察期間を超えて認められたこともあり、患者集積を11人までで中止した。2022年05月にデータカットオフを行った。治療関連有害事象として頻度が高かったのは、発疹(80%)、爪周囲炎(32%)、下痢(30%)、全身倦怠感(21%)だった。grade3以上の治療関連有害事象として頻度が高かったのは、貧血(10%)、AST上昇(4%)、下痢(3%)だった。1回投与量が100mg以下の患者集団では、grade3以上の発疹や下痢を認めなかった。治療中止につながる有害事象は6人の患者で認め、内訳は肺炎2人、肝障害2人、倦怠感1人、アレルギー反応1人だった。治療関連死は認めなかった。全体の奏効割合は28/73(38.4%)、病勢コントロール割合は70/73(95.9%)だった。1回投与量が100mgの患者集団における奏効割合は16/39(41%)、病勢コントロール割合は38/39(97.4%)だった。追跡期間中央値11ヶ月の時点で、奏効が確認できた患者全体の奏効持続期間中央値は10ヶ月(95%信頼区間6-未到達)だった。また、データカットオフ時点で、1回投与量が100mgの患者集団の奏効持続期間は中央値に達していなかった。全体の無増悪生存期間中央値は10ヶ月(95%信頼区間6-12ヶ月)、1回投与量が100mgの患者集団の無増悪生存期間中央値は12ヶ月(95%信頼区間5-未到達)、1回投与量が65mg以下の患者集団の無増悪生存期間中央値は8ヶ月(95%信頼区間5-13)だった。

 

結論:

 zipalertinibはex20ins変異を有し、濃厚ながん薬物療法歴を有する非小細胞肺がん患者に対して有望な抗腫瘍活性を示し、重度の下痢や発疹の合併は少なく、忍容可能な安全性プロファイルを示した。