Mobocertinib(TAK-788)に最初に触れたのは、2019年の米国臨床腫瘍学会の発表に際してでした。
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このときは、第I / II相試験の段階で、参加した患者さんの総数は28人と限られていました。
今回は100人規模まで患者さんの集積を拡大した上での結果が報告されており、よりデータの信頼性が増していると考えられます。
奏効割合、無増悪生存期間ともに競争相手であるpoziotinibより一歩リードしているように見えます。
一方、両薬剤に共通するのは高頻度の非血液毒性で、今後実地臨床への導入を目指すにあたり問題となりそうです。
その点、抗体医薬であるAmivantamabは消化器毒性が相対的に低く抑えられており、さらに一歩リードと言えるかもしれません。
Mobocertinib in NSCLC With EGFR Exon 20 Insertions: Results From EXCLAIM and Pooled Platinum-Pretreated Patient Populations
C.Zhou et al., 2020 World Conference on Lung Cancer abst. #OA04.03
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jtho.2021.01.283
背景:
Mobocertinib(TAK-788)はEGFRエクソン20挿入変異(EGFR20ins)を治療標的としてデザインされた新規のチロシンキナーゼ阻害薬である。今回は、Mobocertinibの第I / II相試験及びその拡大コホート試験であるEXCLAIM試験において、プラチナ併用化学療法歴のあるEGFR20ins陽性非小細胞肺がん患者を対象として解析を行った。
方法:
今回対象としたのは3段階に分かれた臨床試験で、第I相:用量漸増フェーズ、第II相:用量拡大フェーズおよびEXCLAIM試験:拡大コホートフェーズの各段階に参加した患者を対象とした。EXCLAIM試験でプロトコール治療を受けた患者96人、プラチナ併用化学療法歴のある患者(第I相+第II相から28人、EXCLAIM試験から86人の計114人)を解析対象とした。対象となった患者は全て、Mobocertinib 160mgを1日1回服用した。参加適格条件は、局所進行ないしは進行EGFR20ins陽性非小細胞肺がん患者で、ECOG-PS 0-1、1レジメン以上の薬物療法歴があることとした。主要評価項目はRECIST ver.1.1準拠の奏効割合とした。
結果:
EXCLAIM試験では、96人の患者が登録されプロトコール治療を受けた。年齢中央値59歳(27-80)、女性65%、アジア人69%、2レジメン以上の薬物療法歴のある患者が49%(レジメン数1-4)だった。治療継続期間中央値は6.5ヶ月(0-14)だった。奏効割合は23%(22/96、95%信頼区間15-33)だった。奏効持続期間中央値は未到達だった。病勢コントロール割合は76%(95%信頼区間66-84)、無増悪生存期間中央値は7.3ヶ月(95%信頼区間5.5-10.2)だった。プラチナ併用化学療法歴のある患者集団では、114人が解析対象となった。年齢中央値60歳(27-84)、女性66%、アジア人60%、2レジメン以上の薬物療法歴のある患者が59%(レジメン数1-7)だった。治療継続期間中央値は7ヶ月(0-31)だった。2020年5月29日のデータカットオフの時点で、38人(33%)の患者がプロトコール治療を継続していた。奏効割合は26%(30/114、95%信頼区間19-35)だった。病勢コントロール割合は78%(69-85)、無増悪生存期間中央値は7.3ヶ月(95%信頼区間5.5-10.2)、12ヶ月無増悪生存割合は33%(95%信頼区間21-47)だった。腫瘍縮小効果は、アジア人であるか否か、脳転移を有するか否かを含め、概ねどの患者サブグループでも認められた。頻度の高い有害事象(発現頻度30%以上)は下痢(90%)、発疹(45%)、爪囲炎(34%)、嘔気(32%)、食欲不振(32%)、乾皮症(30%)、嘔吐(30%)だった。Grade 3以上の頻度の高い有害事象(発現頻度5%以上)は下痢(22%)、貧血(5%)、呼吸困難(5%)だった。19人(17%)は有害事象のためにプロトコール治療を中断し、その原因は下痢(4%)と嘔気(4%)だった。EXCLAIM試験で観察された有害事象プロファイルは、概ねプラチナ併用化学療法歴のある患者集団で認められたそれと同様だった。
結論:
治療歴のあるEGFR20ins陽性非小細胞肺がん患者に対し、Mobocertinibは臨床的に有益で、対処可能な安全性を示した。