・EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける、PD-L1発現状態とEGFR阻害薬の効果、T790M出現頻度

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 一言で結論を言ってしまうと、「EGFR遺伝子変異陽性肺がんでは、PD-L1発現割合が高いほど、EGFR阻害薬の効果は低下し、T790M出現頻度も低下する」 ということです。2019年の日本呼吸器学会総会、International Poster Discussionで国立台湾大学病院の先生がご発表されていました。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e959711.html  

 幸い、そのときのパンフレットを発掘したので、再度勉強してみました。

 調べてみたら、しっかり論文化されていました。

 

 

The Impact of Pre-Treatment PD-L1 on Clinical Outcomes of Lung Adenocarcinoma Patients with EGFR mutations Receiving Targeted therapies

 2019年 第59回日本呼吸器学会総会、International Poster Discussion

 

Association between programmed death-ligand 1 expression, immune microenvironments, and clinical outcomes in epidermal growth factor receptor mutant lung adenocarcinoma patients treated with tyrosine kinase inhibitors

 Ching-Yao Yang et al., Eur J Cancer. 2020 Jan;124:110-122.

 doi: 10.1016/j.ejca.2019.10.019. Epub 2019 Nov 21.

 

背景:

 PD-L1発現状態は、肺がん一般の免疫チェックポイント阻害薬療法に対する効果予測因子として確立している一方で、EGFR遺伝子変異陽性肺腺がんに対してはそれほど治療効果と相関しない。この件に関しては過去の研究では結論を出すに至っておらず、治療への反応性や治療耐性化に関する問題はほとんど扱われていない。今回の研究では、EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおけるPD-L1発現状態とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療効果、耐性化、その他関連する臨床アウトカムとの相関を評価することを主目的とした。また、EGFR遺伝子変異陽性肺がんの腫瘍微小環境とPD-L1発現状態の関係性について、探索的な検討を行った。

 

方法:

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療を受けたEGFR遺伝子変異陽性進行肺腺がん患者から治療開始前に採取した腫瘍組織を用いて、Dako 22C3抗体を用いた免疫組織化学検査によってPD-L1発現状態を後方視的に検討した。

 

結果:

 153人の台湾人患者を対象とした。女性が58.9%、非喫煙者が75.8%だった。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による奏効割合、無増悪生存期間はPD-L1発現<50%の患者において有意に優れていた(奏効割合 / 無増悪生存期間中央値はPD-L1 0%の患者群では65.6% / 12.5ヶ月、PD-L1 1-49%の患者群では56.4% / 12.8ヶ月、PD-L1≧50%の患者群では38.9% / 5.9ヶ月、p<0.05)。多変数解析を行ったところ、PD-L1<50%は無増悪生存期間における独立した予後良好因子だった(ハザード比0.433、95%信頼区間0.250-0.751、p=0.003)。さらに、PD-L1発現が高い患者ほど、T790M耐性化変異出現頻度が低下していた(T790M出現割合はPD-L1 0%の患者群で53.7%、PD-L1 1-49%の患者群で35.7%、PD-L1≧50%の患者群で10%、p=0.024)。

 

 

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