・OSI-FACT試験 PD-L1発現とオシメルチニブの効果の関係

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 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者を対象に、オシメルチニブとその他の第一世代EGFR阻害薬(ゲフィチニブ / エルロチニブ)の有効性を検討したFLAURA試験。  本試験については繰り返し取り上げたが、概ね以下の記事とそのリンクを見れば内容を分かっていただけると思います。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e967135.html  

 

 全体集団での解析では無増悪生存期間、全生存期間いずれもオシメルチニブの優越性が確認されたにも関わらず、日本人サブセット解析ではオシメルチニブの方がかえって劣っているような結果になってしまいました。

 2年目くらいまではオシメルチニブが優っているものの、3年目になると逆転してしまいます。

 日本人では薬剤性肺障害合併頻度、有害事象による治療中止割合がいずれも高く、このことが成績不振に関与しているのではないかとの意見があります。

 

 今回触れるOSI-FACT試験は、オシメルチニブは本当に日本人ではイマイチなのか、ということを検証する目的で立ち上がったレトロスペクティブ観察研究だそうです。

 熊本、宮城、栃木、千葉、愛知、大阪、兵庫、和歌山、岡山の有志の先生方が協力して取り組んだとのことです。

 2018年8月から2019年12月に患者登録を行い、2021年の日本臨床腫瘍学会で発表されたデータのカットオフは2020年6月時点なので、まだまだ生存解析の結果が出るのには時間がかかります。

 

 

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 発表された先生が強調していたのは、

1)実地臨床ベースでも薬剤性肺障害の頻度が高いこと

2)オシメルチニブの効果にPD-L1の発現状態が関わっていそうなこと

でした。  

 

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 1)については、なんと4人に1人(25%)が薬剤性肺障害を理由に治療中止に追い込まれています。薬剤性肺障害により亡くなられた方が4人おられたようです。薬剤性肺障害の発現時期中央値は56日、範囲は7−477日で、少なくとも治療開始から2ヶ月は慎重に経過を見なければなりません。

 その他の治療中止に至った有害事象をまとめても16%にしかならないので、いかに薬剤性肺障害が問題なのかがよくわかります。

 

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 2)は、PD-L1発現割合が高くなるほど、オシメルチニブの治療効果が弱まる、ということのようです。

 この結果を見ていて、2019年の日本呼吸器学会で台湾の先生が発表されていた内容を思い出しました。

大分での肺がん診療:2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その7 EGFR遺伝子変異とPD-L1の関係 (junglekouen.com)

 PD-L1の発現割合が高くなるほどEGFR阻害薬の効きが悪くなるという点は綺麗に符合しています。幸い、発表当時のパンフレットを発掘したので、別記事でまとめておきました。

・EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける、PD-L1発現状態とEGFR阻害薬の効果、T790M出現頻度 - 大分で肺癌診療 (hatenablog.com)