・KEYNOTE-042試験 アジア人サブグループ5年追跡後評価

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 KEYNOTE-042試験の歴史的意義を簡単に言ってしまえば、PD-L1発現1%以上の患者さんにおけるペンブロリズマブ単剤療法の意義を確認しようとした試験です。

 KEYNOTE-024試験において、既にPD-L1発現50%以上の患者さんでのペンブロリズマブ単剤療法の有効性が確認されたので、では裾野を広げられないか、というわけです。

 トリッキーなのは、PD-L1発現50%以上の患者さんがもともと多数含まれている(アジア人サブグループの実に半数以上を占める)上に、PD-L1発現50%以上の患者さんは、50%以上の患者さんとしても、20%以上の患者さんとしても、1%以上の患者さんとしても解析対象となります。

 ちょっとインチキくさい気がします。

 そのため、本試験はPD-L1発現50%以上の患者さんに関する結果と、探索的解析にすぎませんがPD-L1発現1-49%の患者さんに対する結果を見ておけば事足りると思います。

 前置きが長くなってしまいましたが、ペンブロリズマブ単剤療法を行った時、PD-L1発現50%以上の患者さんでは5年生存割合は22.1%、PD-L1発現1-49%の患者さんでは5年生存割合は17.4%と、PD-L1発現1%以上ならば概ね20%前後の5年生存が見込めるということです。

 

 

KEYNOTE-042: 5-Year Update of 1L Pembrolizumab in Asian Patients With Locally Advanced/Metastatic PD-L1-Positive NSCLC

 

K.Kubota et al., JSMO 2022 Abst.#O8-4

 

背景:
 がん細胞のPD-L1-TPS1%以上で、EGFR / ALK遺伝子異常のない未治療の局所進行ないし進行非小細胞肺がん患者を対象とした国際第III相KEYNOTE-042試験の5年間追跡後の解析で、化学療法群と比較してペンブロリズマブ単剤療法群は全生存期間を延長した(TPS50%以上でハザード比0.68、TPS20%以上でハザード比0.75、TPS1%以上でハザード比0.79)。今回は、本試験にアジアから登録された患者の5年間追跡後の結果について報告する。

 

方法:
 中国、香港、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナム、タイからKEYNOTE=042試験に参加した患者と、中国におけるKEYNOTE-042拡大試験に参加した患者を対象とした。対象者はペンブロリズマブ200mg/回を3週ごとに最大35コースまで投与する群(P群)と、化学療法を3週ごとに4-6コース投与する群(C群)に割り付けられた。C群では、非扁平上皮癌に対するペメトレキセド維持療法が許容された。主要評価項目は、TPS50%以上、TPS20%以上、TPS1%以上の患者集団における生存期間とした。P群に割り付けられた患者のうち、ペンブロリズマブ投与を35コース完遂した者は、病勢進行後にペンブロリズマブの再治療が最大17コースまで受けられることになっていた。

 

結果:
 540人の患者がアジア圏でランダム割り付けを受けた(P群269人、C群271人)。ランダム化からデータカットオフ(2021/04/28)までの中央値は53.7ヶ月(39.8-76.3)だった。以下、特に断りがない限りデータを(TPS50%以上の集団、TPS20%以上の集団、TPS10%以上の集団)とまとめて記す。C群に対してP群で有意に生存期間が延長し、生存期間解析におけるハザード比(95%信頼区間)は(0.73(0.56-0.96)、0.73(0.58-0.92)、0.72(0.60-0.87))だった。5年生存割合はP群で(22.1%、20.8%、19.9%)、C群で(12.0%、11.1%、8.7%)だった。奏効割合はP群で(40.9%、34.9%、31.6%)で、C群で(25.4%、25.0%、24.4%)だった。TSP 1-49%の患者において、全生存期間に関するハザード比は0.71(95%信頼区間0.54-0.92)だった。Grade 3-5の治療関連有害事象はP群の19.7%、C群の58.1%に認めた。P群において、35コースのプロトコール治療を完遂した患者43人の完遂後4年生存割合(=ほぼ6年生存割合)は63.4%(95%信頼区間41.4-79.0)、奏効割合は83.7%(95%信頼区間69.3-93.2)で、そのうち再発後にペンブロリズマブ再投与を受けた患者14人における再投与時の奏効割合は14.3%(95%信頼区間1.8-42.8)、病勢コントロール割合は71.4%だった。

 

結論:
 PD-L1陽性局所進行/進行非小細胞肺がん患者に対し、全体の5年経過後解析結果と同様に、KEYNOTE-042試験のアジア人集団の解析においてもPD-L1発現状態にかかわらずペンブロリズマブは全生存期間を延長した。

 

 

 

 関連記事です。

 PD-L1発現1-49%の患者さんをどう扱うか、という問題については、米国食品医薬品局からも検討結果が発表されています。

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 全体の解析ではPD-L1発現1-49%の患者さんではペンブロリズマブ単剤療法の有効性は認められませんでした。

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