・規制当局FDAからの発表・・・PD-L1発現1-49%の患者における化学療法+免疫チェックポイント阻害薬

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 米国食品医薬品局(FDA)という規制当局が発信する、という点で、とてもユニークな発表だと思いました。

 PD-L1発現1-49%の患者集団において、免疫チェックポイントの適正な使い方に関する臨床試験デザインの今後の在り方を問う、という立ち位置です。

 しかし、タテマエとホンネというか、あくまで後方視的・探索的な統合解析というタテマエを押し出しつつも、この結果を見て実臨床に活かさない医療従事者が果たしているでしょうか。

 本報告から我々が受け止めるのは、PD-L1発現1-49%のドライバー遺伝子変異陰性進行非小細胞肺がん患者において、75歳未満であれば免疫チェックポイント阻害薬+化学療法を選ぶべきだ、ということでしょう。

 75歳以上であれば免疫チェックポイント阻害薬単剤療法か、あるいは化学療法か。

 

 

 

Outcomes of anti-PD-(L1) therapy in combination with chemotherapy versus immunotherapy (IO) alone for first-line (1L) treatment of advanced non-small cell lung cancer (NSCLC) with PD-L1 score 1-49%: FDA pooled analysis.

 

Oladimeji Akinboro et al.

2021 ASCO Annual Meeting abst.#9001

 

背景:

 免疫チェックポイント単剤療法がPD-L1発現陽性の非小細胞肺がんの治療として認可されている一方で、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法±血管増殖因子阻害薬併用療法は、進行非小細胞肺がんの初回治療として米国食品医薬品局(FDA)に認可されている。PD-L1発現が1-49%の進行非小細胞肺がん患者では多くの治療選択肢があり、どのような患者集団でどの治療レジメンが効果があるのか、あまりよく分かっていない。

 

方法:

 抗PD-1抗体 / 抗PD-L1抗体を単剤で、あるいは化学療法と併用で、進行非小細胞肺がん患者の初回治療として用いた8件の無作為化比較試験からデータを抽出して統合解析を行った。PD-L1スコアは腫瘍細胞のうち免疫染色で染まった細胞の割合と定義され、今回の解析はPD-L1スコアが1-49%だった患者を対象とした。腫瘍浸潤免疫細胞は検討から外した。EGFRやALKの遺伝子変異陽性患者は除外した。全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を免疫チェックポイント阻害薬+化学療法(IO-chemo)群と免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO alone)群で比較した。期間中央値はカプランマイヤー法で推計した。ハザード比はコックス比例ハザードモデルで推計し、臨床試験、年齢(65歳未満 vs 65-74歳 vs 75歳以上)、性別、人種、ECOG-PSECOG PS(0 vs 1以上)、組織型、喫煙歴(非喫煙者 vs 現/元喫煙者)を多変数解析の解析因子とした。

 

結果:

 統合解析の対象となった臨床試験は、IOの単剤療法ではKEYNOTE-042試験、CheckMate-227試験、化学療法+IOではKEYNOTE-189試験、KEYNOTE-407試験、KEYNOTE-021試験(コホートG)、IMPOWER-150試験、IMPOWER-130試験、CA2099LA試験だった。PD-L1発現1-49%の非小細胞肺がん患者2,108人を対象とした。患者背景の概要は以下の通り:65−74歳の患者が37%、75%以上の患者は12%、67%が男性、79%が白人、65%がECOG-PS≧1、非扁平上皮癌は68%、85%が現/元喫煙者。IO-chemo群では、白人(88%)、現/元喫煙者(91%)、非扁平上皮癌(77%)の割合が高かった。追跡期間中央値は12.1ヶ月だった。今回の解析では、IO-chemo群(639人)の方がIO alone群(529人)よりもPFSとOSが延長する傾向にあった。PFS中央値はIO-chemo群で7.7ヶ月(95%信頼区間7.1-8.4)、IO alone群で4.2ヶ月(95%信頼区間4.0-4.9)、ハザード比0.60(95%信頼区間0.48-0.76)で、OS中央値はIO-chemo群で21.4ヶ月(95%信頼区間19.4-25.2)、IO alone群で14.5ヶ月(95%信頼区間12.2-16.9)ハザード比0.68(95%信頼区間0.52-0.90)だった。PFSについて、年齢別サブグループで解析すると、IO-chemo群とIO alone群のPFS中央値は、65歳未満のサブグループではそれぞれ7.1カ月、4.0カ月、ハザード比0.55(95%信頼区間0.40-0.76)、65-74歳のサブグループではそれぞれ9.5カ月、4.5カ月、ハザード比0.60(95%信頼区間0.40-0.88)、75歳以上のサブグループではそれぞれ6.4カ月、4.9カ月、ハザード比0.85(95%信頼区間:0.42-1.71)となり、75歳以上の患者では治療による差は見られなかった。OSについて、年齢別サブグループで解析すると、IO-chemo群とIO alone群のOS中央値は、65歳未満のサブグループではそれぞれ23.7カ月、16.1カ月、ハザード比0.63(95%信頼区間0.43-0.92)、65-74歳のサブグループではそれぞれ22.5カ月、14.8カ月、ハザード比0.61(95%信頼区間0.38-0.97)、75歳以上のサブグループではそれぞれ13.9カ月、10.3カ月、ハザード比0.95(95%信頼区間:0.42-2.14)となり、PFS同様に75歳以上の患者では治療による差は見られなかった。これらの結果はあくまで探索的なものであり、今後の臨床試験計画における仮説設定の一助とするものであり、なんらかの結論を導き出そうとするものではない。

 

結論:

 今回の探索的統合解析において、PD-L1発現1-49%の患者では免疫チェックポイント阻害薬+化学療法併用療法の方が、免疫チェックポイント阻害薬単剤療法よりも予後を改善する傾向が示された。75歳以上の患者では、こうした差異は見られなかった。