・KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がん、Sotorasibで1年長生き

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 まだ身の回りでは1件くらいしかKRAS G12C変異患者を見たことはありません。

 2021/05/28付をもって、米国食品医薬品局は既治療KRAS p.G12C陽性進行非小細胞肺がんに対するsotorasibを薬事承認しました。

 KRAS遺伝子変異陽性の患者に対して、分子標的薬単剤で1年以上の生存期間延長が示されたのは、見事です。

 さて、我が国の実臨床にもこの恩恵がもたらされる日は来るのでしょうか?

 

 

Sotorasib for Lung Cancers with KRAS p.G12C Mutation

 

Ferdinandos Skoulidis, M.D., Ph.D. et al., N Engl J Med June 4, 2021

DOI: 10.1056/NEJMoa2103695

2021 ASCO Annual Meeting abst.#9003, CodeBreaK100 trial

 

背景:

 Sotorasibは第I相試験において、KRAS p.G12C変異陽性の進行固形がんに対する有効性を示しており、その中でとりわけ非小細胞肺がんサブグループで有望な抗腫瘍活性を示していた。

 

方法:

 今回の単アーム第II相試験において、既に標準治療を終えたKRAS p.G12C変異陽性非小細胞肺がん患者を対象にsotorasib 960mg1日1回内服投与の有効性を検証した。主要評価項目は独立評価委員会判定による奏効割合(完全奏効(CR)患者+部分奏効(PR)患者 / 全患者)とした。副次評価項目には、奏効持続期間、病勢コントロール割合(CR患者+PR患者+病勢安定(SD)患者 / 全患者)、無増悪生存期間、全生存期間、安全性を含めた。sotorasibの有効性と関わるバイオマーカーについても探索的評価を行った。

 

結果:

 126人の患者が登録され、その大半(81.0%)はプラチナ併用化学療法とPD-1もしくはPD-L1阻害薬の前治療歴を有していた。独立評価委員会判定によると、124人はベースラインで測定可能病変を有し、腫瘍縮小効果について評価された。奏効は46人の患者で認められ(奏効割合37.1%、95%信頼区間28.6-46.2%)、そのうち4人(3.2%)は完全奏効、42人(33.9%)は部分奏効だった。奏効持続期間中央値は11.1ヶ月(95%信頼区間6.9ヶ月-未到達)だった。病勢コントロールは100人の患者で得られ、病勢コントロール割合は80.6%(95%信頼区間72.6-87.2%)だった。無増悪生存期間中央値は6.8ヶ月(95%信頼区間5.1-8.2ヶ月)、生存期間中央値は12.5ヶ月(95%信頼区間10.0ヶ月-未到達)だった。

 治療関連有害事象は126人中88人(69.8%)で認められ、Grade 3の有害事象は25人(19.8%)を、Grade 4相当は1人(0.8%)だった。PD-L1発現状態、tumor mutational burden(TMB)、共存する他の遺伝子異常(STK11、KEAP1、もしくはTP53)の有無でサブグループ解析をしたが、どのサブグループでもsotorasibにより一定の腫瘍縮小効果が認められた。

 

結論:

 今回の第II相試験において、前治療歴のあるKRAS p.G12C陽性非小細胞肺がんに対し、sotorasibは新たな有害事象を伴わず長期にわたる臨床的有用性をもたらした。