プラチナ併用化学療法後、次治療としてのペンブロリズマブ+ドセタキセル併用療法(EGFR遺伝子変異陽性者を含む)

 免疫チェックポイント阻害薬がほぼ一次治療で使われるようになった今になって、二次治療での話かよ、と高を括っていた。

 EGFR遺伝子変異陽性の患者からの相談に答えていて、ふと思いなおした。

 EGFR遺伝子変異陽性で、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療を開始した患者では、耐性化後に免疫チェックポイント阻害薬を使用せずにプラチナ併用化学療法を行う患者の方が圧倒的に多いのだ。

 EGFR遺伝子変異が認められた段階で、PD-L1を評価しない慣例があるのが一因。

 薬剤性肺障害を恐れて、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬を使い切るまでは免疫チェックポイント阻害薬を使いたくない、というのが一因。

 そんなニッチなunmet needに、本試験は切り込んでいるように思う。

 今回の結果を受けて、敢えてEGFR遺伝子変異陽性患者に絞って臨床試験を行ってみれば面白いのではないだろうか。

 現時点で、間違いなくunmet needはある。

Addition of Pembrolizumab to Docetaxel for Previously Treated Immunotherapy-Naive Patients With Advanced NSCLC

Oscar Arrieta et al., JAMA Oncol 2020

doi:10.1001/jamaoncol.2020.0409

背景:

 社会経済的な要因のため、進行非小細胞肺がん患者の多くは初回治療としての免疫チェックポイント阻害薬を使用できずにいる。前治療でプラチナ併用化学療法を行い、病勢進行に至った免疫チェックポイント阻害薬未使用の患者に対して、引き続く免疫チェックポイント阻害薬併用化学療法が臨床的に有用なのかどうか、今のところデータがない。

目的:

 EGFR遺伝子変異状態、もしくはPD-L1発現状態によらず、プラチナ併用化学療法による前治療後の進行非小細胞肺がん患者に対してペンブロリズマブとドセタキセルの併用療法を行った際の効果と安全性を評価すること。

試験デザインと対象患者:

 今回のPROLUNG試験では、組織学的に診断された進行非小細胞肺がん患者78人を、ペンブロリズマブ+ドセタキセル併用療法群(PD群)とドセタキセル単剤療法群(D群)に、1:1の割合で無作為に割り付けた。試験実施時期は2016年12月から2019年5月とした。本試験はメキシコシティーの国立がん研究所単施設で行われた。

治療内容:

 PD群では、ドセタキセル75mg/?を1日目、ペンブロリズマブ200mg/回を8日目に投与し、これを3週間ごとに、最大6コースまで反復し、その後は病勢進行もしくは忍容不能の毒性発現に至るまで、ペンブロリズマブのみを維持療法として継続した。D群では、ドセタキセル単剤療法を病勢進行もしくは忍容不能の毒性発現に至るまで継続した。

評価項目:

 主要評価項目は奏効割合とした。副次評価項目は無増悪生存期間、全生存期間、安全性とした。

結果:

 78人の患者を集積した。32人(41%)は男性、34人(44%)は喫煙経験のない患者、25人(32%)はEGFR遺伝子変異もしくはALK融合遺伝子を有していた。PD群には40人(うち12人はEGFR遺伝子変異陽性)、D群には38人(うち13人はEGFR遺伝子変異陽性)が割り付けられた。独立評価委員会での判定により、統計学的に有意な奏効割合の差が検出された。奏効割合はPD群で42.5%、D群で15.8%、オッズ比は3.94、95%信頼区間は1.34-11.54、p=0.01だった。EGFR遺伝子変異のない患者では、奏効割合はPD群で35.7%,D群で12.0%だった(p=0.06)。一方、EGFR遺伝子変異を有する患者では、奏効割合はPD群で58.3%、D群で23.1%(p=0.14)だった。無増悪生存期間中央値はPD群で9.5ヶ月(95%信頼区間は4.2ヶ月-未到達)、D群で3.9ヶ月(95%信頼区間は3.2-5.7ヶ月)だった(ハザード比0.24、95%信頼区間は0.13-0.46、p<0.001)。EGFR遺伝子変異のない患者では、無増悪生存期間中央値はPD群で9.5ヶ月(95%信頼区間は3.9ヶ月-未到達)、D群で4.1ヶ月(95%信頼区間は3.5-5.3ヶ月)だった(p<0.001)。一方、EGFR遺伝子変異を有する患者では、無増悪生存期間中央値はPD群で6.8ヶ月(95%信頼区間は6.2ヶ月-未到達)、D群で3.5ヶ月(95%信頼区間は2.3-6.2ヶ月)だった(p=0.04)。安全性については、PD群の23%(40人中9人)、D群の5%(38人中2人)においてGrade 1-2の肺臓炎を認め、有意にPD群で高頻度だった(p=0.03)。また、PD群の28%(40人中11人)、D群の3%(38人中1人)において甲状腺機能低下症を認めた(p=0.002)。低マグネシウム血症はPD群では認められず、D群では18%に認めた(p=0.004)。また、リンパ球減少はPD群の20%で認め、D群では認められなかった(p=0.004)。未知の有害事象は認められなかった。

結論:

 今回の第II相試験において、EGFR遺伝子変異陽性者を含む進行非小細胞肺がん患者において、プラチナ併用化学療法既治療の患者に対するペンブロリズマブ+ドセタキセル併用療法が、忍容可能でかつ奏効割合や無増悪生存期間を改善する可能性があることが示された。