CoVID-19を合併した胸部悪性腫瘍患者に関する国際調査

 CoVID-19を合併した胸部悪性腫瘍(ほぼ肺がんと同義と考えてよい)についての報告。

 PCRで診断確定した患者のみならず、CoVID-19患者と濃厚接触した胸部悪性腫瘍患者も、更にはCoVID-19を思わせる臨床症状を呈している胸部悪性腫瘍患者までもが対象として組み入れられており、診断の正確性にはやや疑問が残る。

 男性、喫煙経験者、IV期の患者が多くを占めるというのは、頷ける結果だ。

 3人に1人が化学療法のみを、4人に1人が免疫チェックポイント阻害薬のみを、5人に1人がチロシンキナーゼ阻害薬のみを使用しているというのは、現在の肺がんの治療実態を反映しているようでとても興味深い。また、本来は免疫抑制を来しにくいはずの後二者でもCoVID-19を合併しているということが、この問題の複雑さを物語っているように思う。高リスク群を絞り込めない、ということである。

 胸部悪性腫瘍の患者がCoVID-19を発症したら、4人に1人は死亡する、というのは、なかなかに侮れない。

 そして、ほとんどの患者が集中治療室にまでは収容されなかったという事実。

 基礎疾患に難治性の悪性腫瘍があるから、ということで、人工呼吸管理などの侵襲的な治療は見合わせた、という無言の患者選別圧力が感じ取れる。

AACR 2020: Mortality Rate in Patients With Thoracic Cancers Infected With COVID-19

By The ASCO Post Staff

Posted: 4/29/2020 1:49:00 PM

Last Updated: 4/30/2020 2:23:47 PM

 AACR(American Association for Cancer Research)のvirtual meeting、CoVID-19とがんのセッションにおいて、TERAVOLT患者登録システム(胸部悪性腫瘍とCoVID-19の相関に関する国際的調査)の最初の報告が成された。CoVID-19に罹患した胸部悪性腫瘍患者の死亡率が高いことが示された。

 2020年04月12日までの間に登録された、最初の200人の患者に関するデータを含んでおり、これはCoVID-19に罹患した胸部悪性腫瘍患者の、最初の大きなデータセットである。

 すでにJAMA oncology誌に報告された論文では、肺がんは他の癌腫よりも高いCoVID-19合併率を示していた。この報告は、JCO Oncology Practiceに掲載された論文と同様に、一般大衆と比較して、がん患者もしくはがんサバイバーの方がSARS-CoV-2感染リスクが高いことも示唆していた。

 TERAVOLT患者登録システムは、がんの治療内容にかかわらず、CoVID-19に罹患した胸部悪性腫瘍患者の情報集積を目的として、2020年03月より開始された。世界中の21か国が本調査に参加し、国際的ながん学会の多くがこの取り組みを支援している。臨床検査によりCoVID-19と診断された胸部悪性腫瘍患者や、CoVID-19感染者と濃厚接触した胸部悪性腫瘍患者、CoVID-19を思わせる臨床症状を示した胸部悪性腫瘍患者、全てが本調査の対象とされた。

 最初の200人に関して言えば、年齢中央値は68歳で、その多くは男性で、喫煙経験者だった。stage IVの患者が全体の73.5%を、非小細胞肺がん患者が全体の75.5%を占めた。小細胞がんの患者は14.5%だった。83.8%の患者が、胸部悪性腫瘍以外の合併症を抱えており、頻度が高いのは高血圧(47%)、慢性閉塞性肺疾患(25.8%)だった。

 ほとんどの患者(73.9%)が、何らかのがん治療を受けていた。32.7%が化学療法のみを、23.1%が免疫チェックポイント阻害薬のみを、19%がチロシンキナーゼ阻害薬のみを使用していた。CoVID-19の症状は肺がんの症状と類似しており、そのほとんどは発熱、咳、呼吸困難であって、肺がんの患者がCoVID-19を合併しているかどうかを診断するのは難しい。CoVID-19発症時の主な合併症は、肺炎/肺臓炎が79.6%、急性呼吸促拍症候群が26.6%だった。

 CoVID-19を合併した場合、ほとんどの患者(76%)が入院し、こうした患者のうち33.3%は死亡した。理由ははっきりしないが、入院した患者のほとんどは集中治療室には収容されなかった。単変数解析では、特定のがん治療と死亡リスク増加の相関関係は認めなかった。一般大衆において認められた重要なリスク因子について補正した多変数解析においても、胸部悪性腫瘍患者におけるCoVID-19関連死のリスク因子は同定できなかった。