日経メディカルの記事を眺めていて気がつきました。
中外製薬の新薬開発状況についてまとめられた中に、抗TIGITヒトモノクローナル抗体、Tiragolumabの臨床試験について触れられていました。
https://www.chugai-pharm.co.jp/ir/reports_downloads/pipeline.html
驚くべきことに、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、いずれも第III相試験が現在進行中とのことです。
TIGIT?
初耳です。
こういう免疫チェックポイント蛋白らしい。
https://www.immunooncology.jp/medical/immune-pathways/tigit.html
TIGITは、細胞障害性T細胞、メモリーT細胞、NK細胞、制御性T細胞の表面に発現しています。
腫瘍細胞表面のCD155蛋白やCD112蛋白と会合し、細胞障害性T細胞、NK細胞といった免疫活性化細胞は抑制し、免疫を不活化する制御性T細胞は活性化するとのことです。
第II相試験の計画も結果も聞いたことないのに、いきなり第III相試験とは驚きです。
それも、一次治療を対象とした臨床試験らしいのです。
SKYSCRAPER-01試験が非小細胞肺がん、SKYSCRAPER-02試験が小細胞肺がんに関する試験コードネームとのこと。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04294810
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04256421
SKYSCRAPER-01試験は、未治療の局所進行・進行非小細胞肺がん患者を対象に、アテゾリズマブにTiragolumabを上乗せするかしないかを比較する第III相臨床試験で、主要評価項目は無増悪生存期間と全生存期間です。
SKYSCRAPER-02試験は、未治療の進展型小細胞肺がん患者を対象に、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ併用療法にTiragolumabを上乗せするかしないかを比較する第III相臨床試験で、主要評価項目は無増悪生存期間と全生存期間です。
非小細胞肺がんにおいては、SKYSCRAPER-01試験の前段階と考えられる第II相試験が行われ、患者集積は既に終了しています。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03563716
結果はまだ公表されていないようだが、おそらく手ごたえがあるのでしょう。
また、結果を公表せずに開発を進めるのには、競合する他の製薬会社、他の臨床試験が林立していることが背景にありそうです。
しかし。
非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブとTiragolumabの併用ならまだしも、小細胞がんに対するアテゾリズマブを含めた4剤併用療法、どの程度浸透するでしょうか。
結果が出るころ、CoVID-19で傷ついた世界経済は、こうした治療を積極的に実地臨床へ取り入れる余裕があるでしょうか。