・第II相 I-SABR試験・・・手術不能早期非小細胞肺癌に対する定位放射線照射+ニボルマブ併用療法

 

 免疫チェックポイント阻害薬の活躍の場は、着実に広がってきました。

・進行非小細胞肺がんの単剤二次治療として

・進行非小細胞肺がんの単剤一次治療として

・進行非小細胞肺がんのプラチナ併用化学療法との併用一次治療として

・進行非小細胞肺がんのプラチナ・血管増殖因子阻害薬併用療法との併用一次治療として

・局所進行非小細胞肺がんの化学放射線療法との併用一次治療として

・切除可能非小細胞肺がんの術後補助療法として

・切除可能非小細胞肺がんの術前補助療法として

・進行小細胞肺がんのプラチナ併用化学療法との併用一次治療として 

・進行悪性胸膜中皮腫の免疫チェックポイント阻害薬二剤併用一次治療として

・進行悪性胸膜中皮腫の単剤二次治療として

 

 このようにまとめていくと、肺がん、悪性胸膜中皮腫薬物療法の領域のほとんどを網羅しています。

 そして今回の報告は、リンパ節転移・遠隔転移を伴わない早期非小細胞肺がんや術後肺実質孤発性再発に対する定位放射線照射にニボルマブを併用してはどうか、というコンセプトについて一石を投じています。

 grade3以上の有害事象割合を低く抑えつつも、4年無イベント生存割合を25%近く改善させており、さらには第III相試験も進行中とのことで、今後の進展が興味深いところです。

 そのうち、オリゴ転移に対する定位照射にも免疫チェックポイント阻害薬併用が検討されそうな勢いです。

 

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Stereotactic ablative radiotherapy with or without immunotherapy for early-stage or isolated lung parenchymal recurrent node-negative non-small-cell lung cancer: an open-label, randomised, phase 2 trial

 

Joe Y Chang et al.
Lancet. 2023 Jul 18;S0140-6736(23)01384-3. 
doi: 10.1016/S0140-6736(23)01384-3.

 

背景:

 定位放射線照射(stereotactic ablative radiotherapy, SABR)は、合併症その他の理由で外科切除不能の早期非小細胞肺がんに対する標準治療だが、局所再発、遠隔転移再発、あるいはその両方を来すことは珍しくない。免疫チェックポイント阻害薬による治療は、III期非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後の再発を減らし、生存期間を延長したが、I期やII期の患者における有効性は未だ明らかでない。今回、早期非小細胞肺がん患者を対象に、SABR単独とSABR+免疫チェックポイント阻害薬併用療法(I-SABR)を比較する無作為化第II相試験を企画した。

 

方法:

 米国テキサス州内の3施設共同研究としてオープンラベル無作為化第II相試験を行い、SABRとI-SABRを比較した。適格基準は18歳以上、病理組織学的に確定診断された治療歴のない非小細胞肺がん患者で、AJCC第8版分類におけるIA-IB期(腫瘍最大径が4cm以下、N0M0)、IIA期(腫瘍最大径が4cmを超え5cm以下、N0M0)、IIB期(腫瘍最大径が5cmを超え7cm以下、N0M0)、もしくは手術あるいは化学放射線療法後の肺実質孤発性再発(腫瘍最大径7cm以下)を来したものとした。適格患者は1:1の割合で、Pocock & Simon法に則って、SABR単独群(SABR群)と、SABRに加えてニボルマブを併用する群(I-SABR群)に無作為割り付けされた。I-SABR群では、SABRの照射第1日目に同時に、もしくはその36時間以内にニボルマブ480mgを初回投与することとし、以後4週ごとに同量を反復投与した。プロトコール治療に際し、マスキングは行わなかった。主要評価項目は4年無イベント生存割合とした。イベントは局所再発、遠隔転移再発、異時重複肺がん発症、死亡のいずれかと定義した。ITT解析とper-protocol解析の両方を行った。

 

結果:

 2017/06/30から2022/03/22にかけて、156人の患者が無作為割り付けされ、141人が割り付けられた治療を受けた。観察期間中央値33ヶ月の時点で、I-SABR群で有意に4年無イベント生存割合が高かった。I-SABR群77%(95%信頼区間66-91)、SABR群53%(95%信頼区間42-67)、ITT解析ではハザード比0.42(95%信頼区間0.22-0.80、p=0.0080)、per-protocol解析ではハザード比0.38(95%信頼区間0.19-0.75、p=0.0056)だった。SABR群では、grade3以上の有害事象は認めなかった。I-SABR群では、10人(15%)がニボルマブ投与に関わるgrade3の免疫関連有害事象を発症した。一方、grade3の肺臓炎や、grade4以上の有害事象は認めなかった。

 

結論:

 未治療早期非小細胞肺がん、あるいはリンパ節転移・遠隔転移のない肺実質孤発性再発非小細胞肺がんの患者に対し、I-SABRはSABRと比較して有意に4年無イベント生存割合を改善した。現在進行中の第III相試験によるさらなる検証が必要である。