UFT内服による術後補助化学療法と同様に、高齢 / シスプラチン不耐の局所進行非小細胞肺がん患者さんに対する低用量連日カルボプラチン併用化学放射線療法も、我が国特有の「ガラパゴス的」治療かも知れません。
しかし、これは悪い意味ではなく、むしろ高齢化社会に寄り添った誇るべき治療ではないかと個人的に感じています。
こうした位置づけの治療であるがゆえに、本治療後にデュルバルマブによる地固め療法を行った場合の成績はどうなのか、というのは我が国でないと発信できない情報です。
追跡期間中央値が2年未満ではありますが、それでも無増悪生存期間、全生存期間が中央値に達していないこと、21人のうち亡くなられた方がわずか2人しかいらっしゃらないことは勇気づけられる結果だと思います。
Efficacy of durvalumab after chemoradiotherapy with daily low-dose carboplatin for unresectable locally advanced NSCLC
K Kawajiri et al., JSMO2022, MO11-1
背景:
PACIFIC試験の結果、III期局所進行非小細胞肺がんの標準治療は化学放射線療法とそれに引き続く1年間のデュルバルマブ地固め療法になった。化学放射線療法で用いる化学療法はプラチナ併用化学療法が一般的だが、日本ではプラチナ製剤不耐の患者に対しては低用量カルボプラチンが広く受け入れられている。しかし、PACIFIC試験では低用量カルボプラチン併用化学放射線療法を受けた患者がわずか5人しか組み入れられておらず、本治療を行った場合の有効性は未知数である。
方法:
2007年12月から2021年1月にかけて、国立がん研究センター中央病院で切除不能III期非小細胞肺がんに対して低用量カルボプラチン併用化学放射線療法をうけた患者を評価対象とした。適格患者を2群に分けた。D群:化学放射線療法後にデュルバルマブ地固め療法を行った患者。CRT群:化学放射線療法のみを行った患者。D群とCRT群の臨床経過を比較した。
結果:
切除不能III期非小細胞肺がんに対して化学放射線療法が行われた481人のうち、低用量カルボプラチン併用化学放射線療法を受けた患者は56人だった。年齢中央値は77歳(67-86)だった。21人の患者は化学放射線療法後にデュルバルマブの投与を受け、35人の患者は受けなかった。追跡期間中央値はD群で19.1ヶ月、CRT群で27.8ヶ月だった。無増悪生存期間中央値はD群で有意に延長していた(D群未到達、CRT群12.9ヶ月、p=0.009)。D群では、21人中6人(29%)のみが1年間のデュルバルマブ地固め療法を完遂し、13人(62%)はデュルバルマブを開始から1年以内に中止した。デュルバルマブ治療終了の理由は、病勢進行が6人、有害事象によるものが7人(非感染性肺炎5人、疲労、筋炎が各1人ずつ)。
結論:
低用量カルボプラチン併用化学放射線療法後のデュルバルマブ地固め療法は、III期非小細胞肺がん患者にとって有益である。
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