・PACIFIC試験の5年追跡結果・・・局所進行非小細胞肺がん治療の新たなベンチマーク

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 局所進行非小細胞肺がんの治療にデュルバルマブが使われるようになる前は、この病態に対して標準治療をした際の5年生存割合はざっと20-25%でした。

 これをもとに、治療前の患者さん・ご家族に説明をする際には、

 「4-5人に1人は5年以上長生きできます」

と説明していました。

 PACIFIC試験の結果を受けて、要約の末尾に記載されているように、今後は5年生存率をざっと43%まで引き上げて考えなければなりません。

 若干言い過ぎかもしれませんが、ひいき目に見て

 「2人に1人は5年以上長生きできます」

と説明するべきなのでしょう。

 

 

Five-Year Survival Outcomes From the PACIFIC Trial: Durvalumab After Chemoradiotherapy in Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer | Journal of Clinical Oncology (ascopubs.org)

 

David R. Spigel et al.
Published online February 02, 2022. J Clin Oncol
DOI: 10.1200/JCO.21.01308

 

目的:

 第III相PACIFIC試験は、同時併用化学放射線療法後に病勢進行しなかった切除不能III期非小細胞肺がん患者に対し、デュルバルマブを投与する患者群とプラセボを投与する患者群を比較する試験だった。デュルバルマブによる地固め療法は、主要評価項目の全生存期間(層別化ハザード比0.68、95%信頼区間0.53-0.87、p=0.00251)および無増悪生存期間(RECIST第1.1版準拠、独立判定委員会評価において、層別化ハザード比0.52、95%信頼区間0.42-0.65、p<0.0001)を有意に改善し、安全に治療遂行可能だった。今回は最後の患者が無作為割付されてから約5年経過後に行った探索的生存解析結果について最新データを報告する。

 

方法:

 腫瘍細胞のPD-L1発現状態は問わず、WHO-Performance Status 0もしくは1の適格患者を対象に、デュルバルマブ投与群(D群)とプラセボ群(P群)に2:1の割合で無作為に割り付けた。D群では、デュルバルマブ10mg/kgを2週間ごと、1年間経静脈投与した。割付調整因子は年齢、性別、喫煙歴とした。生存期間解析にはログランク検定を用いた。生存期間中央値、任意の時点における生存割合は、カプランマイヤー法を用いて推計した。

 

結果:

 713人が無作為割付され、709人がプロトコール治療を受けた(D群:476人割付、473人治療、P群:237人割付、236人治療)。2021年1月11日(対象患者すべての追跡期間中央値34.2ヶ月、打ち切り例すべての追跡期間中央値61.6ヶ月)までで、全生存期間(層別化ハザード比0.72、95%信頼区間0.59-0.89、中央値D群47.5ヶ月vsP群29.1ヶ月)、無増悪生存期間(層別化ハザード比0.55、95%信頼区間0.45-0.68、中央値D群16.9ヶ月vsP群5.6ヶ月)と、当初と同様の結果が確認された。推計5年生存割合はD群42.9%(95%信頼区間38.2-47.4)、p群33.4%(95%信頼区間27.3-39.6)、推計5年無再発生存割合はD群33.1%(95%信頼区間28.0-38.2)、P群19.0%(95%信頼区間13.-25.2)だった。

 

結論:

 今回の更新データは、化学放射線療法後のデュルバルマブ地固め療法について、確固とした持続的な全生存期間および無増悪生存期間の延長効果を示した。D群において、42.9%の患者が5年生存し、33.1%の患者が5年無再発生存していると推定されたことで、この患者集団における新たなベンチマークが確立されたといってよい。