・免疫チェックポイント阻害薬使用後の分子標的薬と有害事象

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 免疫チェックポイント阻害薬使用後に引き続いて分子標的治療薬を使うと高度の有害事象に見舞われやすいというのが通説です。
 その嚆矢は、TATTON試験におけるデュルバルマブ治療後のオシメルチニブ治療の結果と考えていいでしょう。

大分での肺がん診療:DurvalumabとOsimertinibの併用療法(ELCC2016) (junglekouen.com)

 この治療レジメンでは、有望な抗腫瘍効果が確認された一方で、実に40%もの患者さんに薬剤性肺障害が出現したとのこと。

 ドライバー遺伝子変異陽性肺がんの患者さんには免疫チェックポイント単剤療法が効きにくい、ということもあり、まずは分子標的治療薬を使えるだけ使って、その後に免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を検討する、という治療戦略が一般的だと思います。

 

 とはいえ、ドライバー遺伝子変異は見つかったものの保険適応の分子標的薬がなく、やむを得ず免疫チェックポイント阻害薬を含む治療をしていたら、分子標的薬が薬事承認されて治療できるようになった、とか、分子標的薬の治験に参加できるチャンスが巡ってきた、という方もいらっしゃるでしょう。

 実際、私の義理の父もそうした経緯をたどりました。

 今回紹介する学会報告では、免疫チェックポイント阻害薬使用後に分子標的薬を使用した患者さんに関するデータがまとめられています。

 免疫チェックポイント阻害薬最終投与から90日以上間隔を置いてからであれば、分子標的薬を使用しても有害事象のリスクが抑えられる、とのこと。

 従って、その90日間をどう過ごすかというのが大きなポイントです。

 化学療法でうまく凌ぐ、というのが最適解なのでしょう。

 なお、経過の詳細が紹介されていた17人の患者さんのうち、6人は有害事象発生直後に経過の追跡が終わっています。

 6人のうち3人は大腸炎、2人は肺臓炎です。

 免疫チェックポイント阻害薬終了から90日間以内に分子標的薬を開始して、大腸炎や肺臓炎に見舞われた場合にはかなり危険と考えるべきでしょう。

 

 なお、以下に紹介する要約と実際の発表ではデータが異なります。

 要約を登録した後にも患者経過に進展があったということと考えられます。

 

 

 

 

 

Adverse events of sequential tyrosine kinase inhibitor following immune checkpoint inhibitor in advanced NSCLC patients

 

Y.Shimoda et al., JSMO2022 Abst.#MO4-3

 

背景:

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の併用は重篤な有害事象を招くことが知られている。加えて、ICI使用に引き続くTKIの使用もまた、有害事象のリスクを高めるとされている。しかし、ICI使用後にどの程度の間隔を空けてTKIを使用するのが適切かははっきりしておらず、どのTKIが有害事象のリスクを高めるのかもわかっていない。

 

方法: 

 2015年11月から2021年4月にかけて、ICI使用後に引き続いてTKIを使用した非小細胞肺がん患者を後方視的に解析した。有害事象はCTCAE第5版を用いて評価した。

 

結果:

 ICIを使用した1638人の非小細胞肺がん患者のうち、58人が引き続いてTKIを使用していた。内訳はEGFR-TKIが47人(オシメルチニブ21人、アファチニブ14人、エルロチニブ9人、ゲフィチニブ3人)、ALK-TKIが9人(アレクチニブ5人、クリゾチニブ3人、ローラチニブ1人)、その他のTKIが2人(lenvatinib1人、ダブラフェニブ/トラメチニブ1人)だった。ICI最終使用からTKI開始までの投与間隔中央値は67日(7-698)だった。Grade 3-4もしくは入院を必要とする重篤な有害事象は14件認め、内訳は大腸炎7件、肝炎3件、肺臓炎3件、粘膜障害1件だった。重篤な有害事象の発生割合、ないしは有害事象によるTKI中止割合は、投与間隔が3ヶ月以内の患者群(38人)の方が、投与間隔が3ヶ月以上の患者群(20人)よりも高かった(重篤な有害事象の発生割合:34.2%(13/38) vs 5.0%(1/20), p=0.02、有害事象による治療中止割合:55.3%(21.38) vs 20.0%(4/20), P=0.01)。重篤な有害事象の発生割合、有害事象による治療中止割合は、EGFR-TKIとその他のTKI(ALK-TKIおよびその他のTKIの総計)の間に有意差を認めなかった(重篤な有害事象の発生割合:23.4%(11/47) vs 27.3%(3/11)、p=1.00、有害事象による治療中止割合:42.6%(20/47) vs 45.5%(5/11), p=1.00)。

 

結論:

 TKIの種類に関わらず、ICI最終使用からTKI開始までの投与間隔が重篤な有害事象の発生割合や有害事象による治療中止割合に関連していた。