春を迎え、例年なら様々な学会が開催され始める季節。
しかし、キャンセルが相次いでいる。
日本内科学会は8月初旬に延期された(本当に8月に開催できるかどうかもわからない)。
日本呼吸器学会は9月下旬に延期された(これも開催できるかどうかわからない)。
欧州肺癌会議(ELCC2020)は中止。
米国臨床腫瘍学会(ASCO2020)は通常開催はせず、ウェブ上でのバーチャル・カンファレンスを開催するとのこと。
国内外の新型コロナウイルス感染拡大の様相からすると、やむを得ないだろう。
今日で2019年度は終わり。
振り返ってみると、進行期肺がんの薬物療法の考え方は随分変わった。
まず肺がんとしての確定診断をする。
小細胞癌なら、アテゾリズマブを使えるかどうかを考えて、治療薬を組み立てる。
二次治療以降は同じだが、ジーラスタを使えるようになって、アムルビシンやトポテカンを比較的長期間続けられるようになった。
非小細胞癌なら、扁平上皮癌かそれ以外かを見極める。
扁平上皮癌ならTPSを評価して、免疫チェックポイント阻害薬の併用のしかたを考える。
非扁平上皮癌なら、ドライバー遺伝子変異を漏らさずチェックする。
遺伝子変異があれば分子標的薬を軸に治療を組み立て、免疫チェックポイント阻害薬は最後の最後までとっておく。
遺伝子変異がなければ、TPSを評価して、免疫チェックポイント阻害薬や血管増殖因子阻害薬の併用のしかたを考える。
免疫チェックポイント阻害薬、血管増殖因子阻害薬は、二次治療移行でも使えるチャンスを見逃さない。
がん性疼痛があれば、適切に、早期から疼痛緩和を試みる。
麻薬性鎮痛薬による便秘に対して、グーフィスなど、従来にはない薬が使えるようになった。
骨転移がある患者には、歯科的なリスク評価をして、必要な治療を終えてからデノスマブやゾレドロン酸を使用する。
新しい治療選択肢が増えるということは、それだけ新しい有害事象、コストにも気を配らなければならないということ。
従来と比較して、最近エビデンスが確認された殺細胞性抗腫瘍薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、血管増殖因子阻害薬、支持療法薬は、どれも使用期間の制限がない。
効いている限りは、ずっと継続が基本だ。
それだけに、有害事象やコストの管理は以前よりも確実に難しくなり、根気強さも求められているように思う。
有害事象やコストに関連して、患者から治療を一時休止したいと申し出があったとき、医療従事者にもその是非を適切に判断して助言を行う姿勢が必要だ。
免疫チェックポイント阻害薬が長期間効いている患者さんの中に、いつの間にか病院受診が滞り音信不通となってしまった方がちらほらと見受けられるのが気になって仕方がない。