新型コロナウイルス感染症対策として、ガーゼマスクは有効なのか?

 最近突如として始まった、各大臣のマスク着用が話題になっている。

 中でも、安倍首相が率先して使用しているガーゼマスクは、一部で失笑を買っている。

 アベノミクスにあやかって、アベノマスクという用語まで出てきているようだ。

 以下の論文を見る限り、吸入予防対策としてのガーゼマスクは、エアロゾルを想定した人工微粒子を97%透過したそうで、ザルみたいなもんである。

 一方、医療用マスクは、44%の透過性に留まるとのこと。

 布マスク装着は医療従事者は避けた方が良さそうだが、医療用マスクについては、あながち、全く意味がないとも言い切れない結果だ。

 さて、それではガーゼマスクを発症者、あるいは無症候性の新型コロナウイルスキャリア(=誰もがそうである可能性あり)に装着させた場合、エアロゾル拡散を防ぐ効果がどれくらいあるのだろうか。

 国民の意識向上を促す意味ではガーゼマスク配布の意味はあるかもしれないが、科学的に有効な対策なのかどうかは、並行してきちんと検証してほしい。

 現段階では、有効とも無効とも断じるべきではない。

 reduce, reuse, recycleという観点から言えば、本当に有効ならばガーゼマスク利用の意義はとても高い。

 私も学校給食の給食係の時にはガーゼマスクを使っていた(しょっちゅう忘れ物をして怒られていた)世代なので、ガーゼマスクがこうした形で活躍できるのであれば、それはそれで嬉しい。

A cluster randomised trial of cloth masks compared with medical masks in healthcare workers

MacIntyre. et al., BMJ Open 2015

http://dx.doi.org/10.1136/ bmjopen-2014-006577

目的:

 本研究の目的は、病院内医療従事者の感染予防対策として、布マスクと不織布製医療用マスクの効果を比較することである。帰無仮説は、布マスクと医療用マスクの間に効果の違いがない、ということとした(布マスクと医療用マスクの効果に有意差がつくことを検証した)。

方法:

 ベトナムハノイにおける14病院の、院内感染高リスクの計74病棟において、18歳以上でフルタイム勤務をする医療従事者を対象とした。病棟ごとに、1)医療用マスクを使う病棟、2)布マスクを使う病棟、3)通常実地医療に即した対応をする病棟(コントロール群)に無作為割付し、勤務シフトごとにマスクを装着して業務についてもらい、連続4週間継続した。医療用マスクは1日2枚支給して使い捨て、布マスクは期間中ずっと、洗濯を繰り返しながら利用継続してもらった。主要評価項目は、臨床的に問題となる呼吸器疾患、インフルエンザ様疾患、呼吸器系の症状を起こすウイルスの検出割合とした。

結果:感染症に関連した全てのアウトカムについて、布マスクは最悪の結果となった。医療用マスク群と比較して、布マスク群は有意にインフルエンザ様疾患に罹患する割合が高かった(相対危険度 13.00、95%信頼区間 1.69-100.07)。コントロール群を個別に調べて、医療用マスク群と布マスク群に区分してそれぞれの群に加えたところ、布マスク群はインフルエンザ様疾患に罹患する割合(相対危険度 6.64、95%信頼区間は1.45-28.65)や、検査により何らかのウイルス感染が判明する割合(相対危険度 1.72、95%信頼区間1.01-2.94)が高かった。既定の微粒子がそれぞれのマスクをどの程度透過するか、という実験では、布マスクでは97%までが透過したのに対して、医療用マスクでは44%にとどまった。