・第III相J-AXEL試験・・・既治療進行非小細胞肺がんに対するnab-PTXの効果

f:id:tak-OHP:20220124203319j:plain

 

 少し昔の話になりますが、 「既治療進行・再発非小細胞肺がんに対するドセタキセル(DTX)とナブパクリタキセル(nab-PTX)のランダム化比較第III相試験(J-AXEL試験)」 の結果が2020年の第61回日本肺癌学会総会で公表されていたので、概要を振り返ります。  

 ネーミング的に、日本人ALK融合遺伝子陽性患者に対するアレクチニブの有効性を検証したJ-ALEX試験と紛らわしいです。  

 全生存期間はnab-PTXで16.2ヶ月(DTXで13.6ヶ月)、無増悪生存期間はnab-PTXで4.2ヶ月(DTXで3.4ヶ月)、奏効割合はnab-PTXで29.9%(DTXで15.4%)、Grade 3以上の発熱性好中球減少はnab-PTXで0.7%(DTXで18.1%)で、どの要素をとってもnab-PTXが優れています。 nab-PTXが不利な点は、延々と毎週点滴に通わなければならないという点、PTXほどでないとはいえ、末梢神経障害がほぼ半数と高率に認められる、ということです。 病院へのアクセスが悪い患者(郊外から都市部の病院に通う高齢者、体が不自由な高齢者など)にとっては毎週点滴通いは負担でしょう。また、PTXの末梢神経障害というのは、経験した方でなければ想像がつかないくらいつらい副作用のようです。

 

背景:

 既治療進行非小細胞肺がん患者に対する新たな標準治療確立を目的とし、ドセタキセル(DTX)単剤療法に対するnab-PTX単剤療法の有効性、安全性を検証するランダム化比較第III相試験を実施した。

 

方法:

 前治療2レジメン以内の既治療進行非小細胞肺がん、20歳以上、PS 0-1の患者をnab-PTX群(3週間おきに1日目、8日目、15日目に100mg/m2を投与)もしくはDTX群(3週おきに60mg/m2を投与)に1:1の割合で無作為に割り付けた。EGFR遺伝子変異陽性/ALK融合遺伝子陽性患者については、TKI治療が終了していることを参加の条件とした(EGFR-TKI、ALK-TKI、免疫チェックポイント阻害薬の使用はレジメン数に加えないと規定した)。層別化因子は、性別、PS、臨床病期、組織型、EGFR遺伝子変異の有無、前治療レジメン数、免疫チェックポイント阻害薬治療歴だった。主要評価項目は全生存期間とし、nab-PTXのDTXに対する非劣勢を検証することにした。非劣勢マージンの上限はハザード比1.25とし、非劣勢が証明された場合には優越性を検証することとした。副次評価項目として、無増悪生存期間、奏効割合、有害事象発生割合、QoLを副次評価項目とした。

 

 結果:

  2015年05月から2018年03月の期間に、82施設から503人が登録された。男性が348人(69.2%)、非扁平上皮がんが403人(80.1%)、EGFR遺伝子変異陽性が115人(22.9%)、免疫チェックポイント阻害薬での前治療歴ありが68人(13.5%)だった。DTX群に251人(投与を受けたのは249人)、nab-PTX群に252人(投与を受けたのは245人)が割り付けられ、両群間の患者背景に差はなかった。最終カットオフ時点は2020年3月だった。OS中央値はDTX群が13.6ヶ月(95%信頼区間10.9-16.5)、nab-PTX群が16.2ヶ月(95%信頼区間14.4-19.0)、2年OS割合はDTX群が30.5%(95%信頼区間24.9-36.2)、nab-PTX群が34.3%(95%信頼区間28.5-40.2)でハザード比0.85(95.2%信頼区間0.68-1.07)だった。ハザード比の上限1.07が非劣勢マージン上限1.25を下回ったことから、非劣性が証明された。しかし、p=0.163で優越性は証明されなかった。生存曲線は、全体的にnab-PTX群が優位だった。  PFS中央値は、DTX群が3.4ヶ月(95%信頼区間2.9-4.1)、nab-PTX群が4.2ヶ月(95%信頼区間3.9-5.0)、1年PFS割合はDTX群が8.4%(95%信頼区間5.2-12.6)、nab-PTX群が12.2%(95%信頼区間8.3-16.9)でハザード比0.76(95%信頼区間0.63-0.92)、p=0.0042で有意にnab-PTX群で延長していた。nab-PTX群のPFS延長効果はどの組織型でも維持されていた。OSのハザード比0.85はドセタキセル+ラムシルマブによるREVEL試験の0.86、PFSのハザード比0.76はREVEL試験の0.76と同等だった。  奏効割合は、DTX群が15.4%(95%信頼区間10.9-20.7)、nab-PTX群が29.9%(95%信頼区間24.0-36.2)で有意にnab-PTX群が高かった(p=0.0002)。組織型別でも同様だった。 有害事象は、Grade 3以上の発熱性好中球減少症は有意にDTX群で多く(18.1% vs 0.7%)、末梢神経障害は有意にnab-PTX群で多かった(47.3% vs 15.5%)。

 

図表:

 

f:id:tak-OHP:20220124202728j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124202826j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124202852j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124202929j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124202956j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124203021j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124203044j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124203114j:plain

 

f:id:tak-OHP:20220124203130j:plain