ARCHER 1050のEGFR変異別サブグループ解析と日本人サブグループ解析

 先般行われた世界肺癌会議で、DacomitinibのEGFR変異種別サブグループ解析、日本人サブグループ解析の結果が相次いで発表された様子。

 アファチニブと同様に、Exon 19変異の患者の方が、PFSが長い傾向にあるようだ。

 また、日本人サブグループ解析では、PFS中央値が18.3ヶ月と、標準治療群ゲフィチニブに対してダブルスコアを記録している。

 薬価や毒性の問題、オシメルチニブとの使い分けの問題もあるかもしれないが、注目すべきデータだろう。

<EGFR変異陽性NSCLCに対する1次治療としてのdacomitinibは変異の種類に関わらず有効> 2017年世界肺癌会議

 第III相ARCHER1050試験のサブグループ解析の結果、第2世代EGFR-TKIであるdacomitinibは、EGFR変異陽性非小細胞肺癌(NSCLC)に対する1次治療として、Exon 19欠失患者とExon 21点突然変異の患者のどちらにも有効であることが明らかとなった。

 ARCHER 1050試験は、未治療、IIIB期 / IV期のNSCLC患者または術後再発NSCLCでEGFR変異を持つ(Exon 19欠失か Exon 21 L858R変異)患者で、中枢神経系に転移がない患者を対象に行われた。2013年5月から2015年3月までに7カ国、71施設で452人が、dacomitinib群(45mgを1日1回経口投与)とゲフィチニブ群(250mgを1日1回経口投与)に1対1で無作為割り付けされた。層別化因子は人種(アジア人か非アジア人が)、EGFR変異の種類(Exon 19かExon 21か)だった。

 ARCHER 1050試験の全体のPFSについては、ASCO2017で発表された。

 PFS中央値は、dacomitinib群が14.7カ月(95%信頼区間:11.1-16.6)、ゲフィチニブ群が9.2カ月(95%信頼区間:9.1-11.0)で、ハザード比が0.59(95%信頼区間:0.47-0.74)、p<0.0001で有意にdacomitinib群が長かった。

 今回発表されたのは、変異の種類別PFSである。

 Exon 19変異の患者において、PFS中央値はdacomitinib群(134人)が16.5カ月(95%信頼区間:11.3-18.4)、ゲフィチニブ群(133人)が9.2カ月(95%信頼区間:9.1-11.0)で、ハザード比が0.55(95%信頼区間0.41-0.75)、片側p<0.0001で有意にdacomitinib群が長かった。

 Exon 21変異の患者において、PFS中央値は、dacomitinib群(93人)が12.3カ月(95%信頼区間:9.2-16.0)、ゲフィチニブ群(92人)が9.8カ月(95%信頼区間:7.6-11.1)で、ハザード比0.63(95%信頼区間:0.44-0.88)、片側p=0.0034で有意にdacomitinib群が長かった。

 奏効率は、Exon 19変異の患者においてdacomitinib群が76.1%(95%信頼区間:68.0-83.1)、ゲフィチニブ群が69.9%(95%信頼区間:61.4-77.6)、p=0.1271で差がなかった。Exon 21変異の患者においてdacomitinib群が73.1%(95%信頼区間:62.9-81.8)、ゲフィチニブ群が73.9%(95%信頼区間:63.7-82.5)、p=0.5487で差がなかった。

 DOR中央値は、Exon19変異の患者においてdacomitinib群が15.6カ月(95%信頼区間:13.1-19.6)、ゲフィチニブ群が8.3カ月(95%信頼区間:7.9-10.1)で、ハザード比0.454(95%信頼区間:0.319-0.645)、p<0.0001で有意にdacomitinib群が長かった。Exon 21変異の患者においてdacomitinib群が13.7カ月(95%信頼区間:9.2-17.4)、ゲフィチニブ群が7.5カ月(95%信頼区間:6.5-10.2)で、ハザード比0.403(95%信頼区間:0.267-0.607)、p<0.0001で有意にdacomitinib群が長かった。

<日本人のEGFR変異陽性NSCLCに対する1次治療でのdacomitinibのPFS中央値は18.3カ月> 2017年世界肺癌会議

 第III相ARCHER 1050試験の、日本人データが発表され、日本人患者のdacomitinib群のPFS中央値は18.3ヶ月だった。

 日本人はdacomitinib群に40人、ゲフィチニブ群に41人が含まれていた。日本人患者におけるdacomitinib群とゲフィチニブ群の間には、年齢、男女比、全身状態、喫煙歴に差が少しあった。dacomitinib群の方が65歳未満、女性、PS 0、過去に喫煙歴がある患者が多く、ゲフィチニブ群には喫煙歴のない患者が多かった。

 患者全体のPFS中央値は、ASCO2017で発表され、dacomitinib群が14.7カ月(95%信頼区間:11.1-16.6)、ゲフィチニブ群が9.2カ月(95%信頼区間:9.1-11.0)で、ハザード比0.59(95%信頼区間:0.47-0.74)、p<0.0001で有意にdacomitinib群が長かった。

 日本人におけるPFS中央値は、dacomitinib群が18.2カ月(95%信頼区間:11.0-31.3)、ゲフィチニブ群が9.3カ月(95%信頼区間:7.4-14.7)で、ハザード比0.540(95%信頼区間:0.308-0.946)、p=0.0141でdacomitinib群が長かった。

 日本人患者の奏効率は、dacomitinib群が75.0%(95%信頼区間:58.8-87.3)、ゲフィチニブ群が75.6%(95%信頼区間:59.7-87.6)、p=0.5254で差がなかった。

 日本人患者のDOR中央値は、dacomitinib群が17.5カ月(95%信頼区間:10.2-34.3)、ゲフィチニブ群が8.3カ月(95%信頼区間:5.6-12.9)、p=0.0056でdacomitinib群が長く、患者全体よりも長かった。

 dacomitinib群の日本人患者で多く認められたグレード3の副作用はざ瘡様皮疹(27.5%)で、患者全体と比べても日本人で多く発現していた。dacomitinib群の日本人患者の85%で減量が行われた。