・AZD3759(zorifertinib)・・・今後果たして出番はあるのか?

 

 AZD3759(zorifertinib)は、7年以上前に記事にして取り上げたことがあります。

大分での肺がん診療:髄液移行性の良いEGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (junglekouen.com)

 髄液移行性に優れるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬として開発されたようですが、その後の進捗状況を追跡できていませんでした。

 細かい経緯は分かりませんが、創薬元のAstrazeneca(英国)からAlpha Biopharma(中国)にAZD3759の権利が移っている模様で、今回の臨床試験のスポンサーはAlpha Biopharmaであり、参加国は中国、韓国、台湾、シンガポールとなっています。

 今年の米国臨床腫瘍学会で、ゲフィチニブやエルロチニブとの比較において、無増悪生存期間や頭蓋内病変への有効性を有意に改善した、とのことです。

 同じく髄液移行性に優れ、頭蓋外病変やT790M耐性変異にも有効なオシメルチニブが広く使われるようになったいま、AZD3759をどのように臨床応用するのか、思案のしどころです。

 オシメルチニブ使用後、頭蓋内病変により病勢進行に至った患者さんに対して次治療として利用する、といった使い方があるかも知れません。

 

 

 

 

Randomized phase 3 study of first-line AZD3759 (zorifertinib) versus gefitinib or erlotinib in EGFR-mutant (EGFRm+) non–small-cell lung cancer (NSCLC) with central nervous system (CNS) metastasis.

 

Yi-Long Wu et al.
ASCO 2023, Abst.#9001
DOI: 10.1200/JCO.2023.41.16_suppl.9001

 

背景:

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんは高率に中枢神経系への転移を合併し、その際の治療選択肢は限られており、予後は不良である。中枢神経系転移合併EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんを対象とした第3相比較試験による確固としたエビデンスはこれまでのところ報告されていない。AZD3759は脳血液関門通過性の高いEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)で、前臨床データでは頭蓋の内外を問わず有望な抗腫瘍活性と忍容性を示した。

 

方法:

 今回の第3相オープンラベル多施設共同無作為化比較試験では、中枢神経系転移合併EGFR遺伝子変異(エクソン21L858R点突然変異 / エクソン19欠失変異)陽性非小細胞肺がん患者を対象に、初回治療においてAZD3759と第1世代のEGFR-TKIの有効性と安全性を比較した。対象となった成人患者は、AZD3759群(AZD3759 200mgを1日2回内服)と第1世代群(ゲフィチニブ250mgを1日1回内服、もしくはエルロチニブ150mgを1日1回内服)に1:1の割合で無作為割り付けされた。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とし、RECIST 1.1準拠で独立委員会により効果判定された。

 

結果:

 2019/02/01から2021/01/12の期間に、439人の患者が無作為割り付けされた(AZD3759群220人、第1世代群219人)。2022/07/12までで、両群ともに追跡期間中央値は20.4ヶ月だった。PFS中央値はAZD3759群で有意に延長していた(AZD3759群9.6ヶ月(95%信頼区間8.2-9.7) vs 第1世代群6.9ヶ月(95%信頼区間6.3-8.0)、ハザード比0.719(95%信頼区間0.580-0.893)、p=0.0024)。奏効割合はAZD3759群68.6%、第1世代群58.4%だった(p=0.027)。奏効持続期間中央値はAZD3759群8.2ヶ月、第1世代群6.8ヶ月だった(p=0.0997)。頭蓋内病変に関するPFS、奏効割合、奏効持続期間はいずれもAZD3759群の方が優れていた(図表参照)。生存期間については、イベント発生数が少なく解析できなかった。全グレードの有害事象は両群間で同等だった(AZD3759群97.7% vs 第1世代群94.0%)。Grade 3以上の有害事象はAZD3759群で65.9%、第1世代群で18.3%だった。主な有害事象は皮膚や皮下組織、消化器系、肝機能に関するものだった。

 

結論:

 中枢神経系転移合併EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する初回治療として、AZD3759は第1世代EGFR-TKIと比較して、頭蓋内外での抗腫瘍効果を有意に改善した。有害事象は想定範囲内で管理可能だった。