Avelumabの二次治療はこけてしまった・・・JAVELIN Lung 200試験

 多少の条件の違いはあれ、現在我が国では非小細胞肺癌に対する二次治療として、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブといった複数の免疫チェックポイント阻害薬を使うことができる。

 今回登場するAvelumabは、アテゾリズマブと同様にPD-L1阻害薬に分類され、開発中の免疫チェックポイント阻害薬の話題になると必ず話題に上ってくる薬だった。

 しかし、残念ながら今回の臨床試験では、有効性を証明することはできなかった。

 ・・・まあ正直言って、同様の治療選択肢が3種あれば十分か、という気もする。

 それにしても、今回の要約を読んでいて眉をひそめてしまったのは、ドセタキセル群の治療関連死の割合が4%にも上るということ。

 実地臨床での感覚からすると、ちょっと高すぎるような気がする。

 臨床試験である以上は、実地臨床よりも体力のある患者が参加しているはずで、それでいてこの数字はちょっと高すぎる。

 治療関連死の原因内訳をみても、なんだか診断自体があいまいすぎて、よく分からない。

 診療の質自体がどうなのか、ちょっと疑問視してしまう。

 論文本編ではなく、要約しか読んでいないので、詳細は分からないが、とりあえず以下のリンクが参考になるだろう。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e926191.html

Avelumab versus docetaxel in patients with platinum-treated advanced non-small-cell lung cancer (JAVELIN Lung 200): an open-label, randomised, phase 3 study

Fabrice Barlesi et al., Lancet Oncol September 24, 2018

DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30673-9

背景:

 進行非小細胞肺がん患者の治療において、免疫チェックポイント関連分子であるPD-1 / PD-L1を治療標的とした抗体は臨床的効果を示した。今回は、プラチナ併用化学療法治療歴のある非小細胞肺がん患者に対する抗PD-L1抗体Avelumabの効果と安全性について検証した。

方法:

 JAVELIN Lung 200試験は、多施設共同、オープンラベル、無作為化、第III相臨床試験として計画され、31か国から173施設が参加した。以下を適格条件とした:18歳以上、臨床病期IIIB期 / IV期 / 術後再発、プラチナ併用化学療法後に病勢進行が認められた、ECOG-PS 0 / 1、期待される生存期間12週間以上、骨髄機能・腎機能・肝機能が適切に保たれている。

参加者はAvelumab群(10mg/kg, 2週間ごと投与)とドセタキセル群(75mg/?、3週間ごと投与)のいずれかに1:1の比率で無作為に割り付けられた。割り付け調整因子は腫瘍のPD-L1(73-10抗体で評価)発現状態(腫瘍細胞の1%以上か、1%未満か)、組織型(扁平上皮癌か、非扁平上皮癌か)とした。主要評価項目は全生存期間で、PD-L1陽性の患者集団において概ね337イベントが発生した時点で解析を行う予定とした。治療効果はまずPD-L1陽性患者集団(腫瘍細胞の1%以上がPD-L1陽性)において解析され、引き続いて全ての患者集団で解析するといった階層的な手法をとった。安全性は少なくとも1コースのプロトコール治療が行われた全ての患者集団で解析した。

結果:

 2015年3月24日から2017年1月23日にかけて、792人の患者が本試験に登録され、Avelumab群に396人、ドセタキセル群に396人が無作為に割り付けられた。Avelumab群のうち264人、ドセタキセル群のうち265人はPD-L1陽性と判定された。PD-L1陽性患者集団において、生存期間中央値に有意な差はなかった(Avelumab群11.4ヶ月(95%信頼区間は9.4-13.9ヶ月)vs ドセタキセル群10.3ヶ月(95%信頼区間8.5-13.0ヶ月)、ハザード比0.90(95%信頼区間0.72-1.12)、片側検定でのp=0.16)。治療関連有害事象はAvelumab群393人のうち251人(64%)、ドセタキセル群365人のうち313人(86%)で認めた。頻度の高かったGrade 3-5の有害事象は、Avelumab群では点滴時の過敏反応(infusion related reaction)が6人(2%)、リパーゼ上昇が4人(1%)で、ドセタキセル群では好中球減少が51人(14%)、発熱性好中球減少が37人(10%)だった。重篤な治療関連有害事象はAvelumab群で34人(9%)、ドセタキセル群で75人(21%)だった。治療関連死はAvelumab群で4人(1%)で、間質性肺炎2人、急性腎障害1人、自己免疫性心筋炎+心不全+呼吸不全1人だった。同様にドセタキセル群では14人(4%)で、肺炎3人、発熱性好中球減少1人、敗血症性ショック1人、敗血症性ショックを伴う発熱性好中球減少1人、急性呼吸不全1人、心不全1人、腎障害1人、粘膜炎を伴う白血球減少1人、感染症1人、好中球減少を伴う感染症1人、脱水1人で、あと1人は原因不明だった。

結論:

 プラチナ併用化学療法後に病勢進行を来し、PD-L1陽性の非小細胞肺癌に対し、Avelumabはドセタキセルに対する優越性を示せなかった(が、安全性は高かった)。