医師賠償責任保険

 拠点を今の職場に移して、早いもので5年半が過ぎようとしている。

 経気管支肺生検への参加は、今年の5月半ばの検査を最後に、しばらく自粛している。

 思わぬリスクが明らかになったからである。

 今年の5月半ば、経気管支肺生検に参加した。

 右肺上葉、肺尖部に空洞性病変がある患者。

 肺がんというよりは、非結核性抗酸菌症や肺アスペルギルス症の方が疑われるレントゲン・CTの所見だった。

 若手の先生が如才なく検査を進め、確実に診断するために何回か鉗子生検を行った。

 だがしかし、その後に陥穽が待っていた。

 出血が止まらないのだ。

 出血している気管支に気管支鏡を押し付けても、止血薬を注入しても、少しずつだが血がにじみだしてくる。

 徐々に視野が取れなくなる。

 患者の呼吸状態は徐々に悪化し、脈は増え、血圧が下がり始める。

 若手の先生が対応していて、ジリ貧になってきたとき、その後を誰が引き取るかと言えば・・・、その場にいる医師の中で、一番年を食っている者である。

 私が最後の砦ということになった。

 そこからは、呼吸器外科に応援を頼み、EWSやらフォガティーカテーテルやら、フィブリングルーやらを総動員して、内視鏡止血手技の総動員戦になった。

 出血源だった気管支にEWSを詰め込んでフィブリンを注入しても、その隣の気管支からまたあふれ出してくる。

 きっと肺の奥の方で、コーン孔やらランベルト管でつながっているのだろう。

 幸い、止血用のこれらのデバイスが呼吸器外科に豊富にストックされていたことで、物量作戦で何とか急場をしのぐことができた。

 応急処置を済ませて、病棟に移動して人工呼吸管理に移行し、どうにか事なきを得た。

 後日、再出血リスク回避と確定診断目的で右肺上葉切除をすることになり、結果として非結核性抗酸菌症と診断され、患者は元気に退院した。

 医師賠償責任保険には必ず加入しよう。