気管支鏡検査制限

 いよいよ気管支鏡検査を制限しようという議論が真実味を持って語られ始めた。

 すでに、急を要しない気管支鏡検査はできるだけ行わない、あるいは先延ばしにする流れになっている。

 これだけ感染経路不明の患者が増えると、気管支鏡の対象となる患者がたまたま新型コロナウイルスキャリアだったという可能性も出てくる。

 新型コロナウイルスでどうかは知らないが、結核菌では、気管支鏡の術者の感染リスクは通常の20倍ともいわれている。

 術者以外にも複数の医師が介助につくことが多いので、もしその場でコロナウイルスに暴露されたら、その影響は甚大である。

 しかし、肺がん疑いの患者の気管支鏡検査、「しない」とか、「延期する」とか、果たして倫理的に許されるだろうか。

 以下の記事に挙げた患者は、一時は昏睡状態に陥っていたが、超音波気管支鏡下縦郭リンパ節生検でEGFR遺伝子変異陽性肺がんと診断され、オシメルチニブで治療を継続された結果、近々退院するようだ。

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e971719.html

 胸水や無数の多発肺転移はほぼ消失、無気肺は改善し、原発巣は劇的に縮小。

 多発脳転移巣は大きさこそさほど変わらず、mid line shiftが残っているものの、病勢は制御されている様子。

 何より、昏睡状態に陥っていた進行期肺がん患者が、歩いて家に帰ろうとしているというのは、一昔前ならば奇跡としか言いようがない。

 まあしかし、肺がんの確定診断の80%を経皮的針生検で行う、という診療施設もあるわけで、欧米ではむしろそちらの方がスタンダードである。

 これから先、経皮的針生検での検査比率を上げる医療機関が増えるかもしれない。

 呼吸器内科医の仕事が減り、放射線科医の仕事が増える。

 そして、いったんその流れが定着すると、新型コロナウイルスの脅威が緩和されても、元の状態に戻ることは難しいだろう。

 新型コロナウイルスは、社会、経済、医療などなど、様々なシステムに変革を迫る。

 厄介なことこの上ないが、この圧倒的な影響力に、宇宙の神秘を感じるのは私だけだろうか。