・終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい

 がんの種類を問わず、社会復帰を目指したリハビリテーションを希望する患者さん、あるいは住み慣れた地域での終末期医療を希望する患者さんは、できるだけ受け入れるように努力しています。

 今日は、婦人科がんの患者さん受け入れについて、県外の医療機関から要請がありました。

 全国的に緊急事態宣言が発出されている中での、県外からの患者さん受け入れ要請です。

 こちらからの要望をお返事にまとめて、できるだけいい形でお受け入れできるように、先方でも当院でも準備を進めることにしました。

 

 現在の入院担当患者さんで、背景は様々ながら終末期と言ってよい患者さんは、5人いらっしゃいます。

 進行肺がん、進行胃がん、気管支拡張症、認知症及び反復性胆道感染症といった背景です。

 目下のところ一番つらそうなのは、黄疸が急速に進行しつつある胃がんの患者さんと、呼吸不全が進行しつつある気管支拡張症の患者さんです。

 ことに後者は、苦しい、きつい、早く死なせてくれ、と、診察の度に眉間にしわを寄せて切々と訴えられます。

 

 患者さんもつらいのですが、ご家族もまたつらいです。

 緊急事態宣言を受けて、当院でも院長先生と感染対策委員会の指示のもと、院内感染予防対策を行っています。

 面会は原則禁止、不要不急の病状説明も禁止、どうしても必要なら外来スペースを用いて短時間で病状説明を、という指示内容でした。

 ましてや、関東や関西、福岡からのご家族の帰省・面談などもってのほか、という状況です。

 現在、私自身の親族も良性疾患で入院中なのですが、県外在住の親族には、こちらで責任もって面倒見るから帰ってこないように、と伝えています。

 

 しかし、日頃患者さんに会えていない終末期がんのご家族ほど、せめて最後のひとときだけはと、現下の状況においても面会を切望されます。

 お気持ちはわかるのですが、何とかしてあげたいのはやまやまなのですが・・・。

 でも、なぜ今まで、こうした社会情勢になるまで、まめに会いに来てあげなかったのですか、という気にもまたなります。

 

 病棟診療をしている最中、黄昏時になって、外来から発熱患者さんの診療依頼がありました。

 ここ3−4日にわたり、微熱だけが続いている70代後半の患者さんです。

 かかりつけの2病院に受診相談をしたところ、どちらからも受け付けの段階で(担当医への相談もなく)断られたとのこと。

 困り果てて保健所に相談してみると、自宅住所の最寄りの医療機関が当院だから、という理由で、当院受診を指示されたそうです。

 県外・海外への移動歴はなく、県外・海外居住者との接触歴もなく、新型コロナウイルス感染確定者との接触歴もありません。

 それでも各種臨床検査を行ったところ、新型コロナウイルス肺炎が疑われるレントゲン、CT所見を認めました。

 保健所に報告して、新型コロナウイルスPCR検査を依頼し、解熱薬を処方して自宅待機していただくこととしました。

 結果がはっきりするまで、どうか病状が急速に進行しないようにと祈るばかりです

 

 たとえ外来対応であっても、こうした形で前触れなくCoVID-19疑い患者さんと接する機会があると思うと、並行して他の外来・病棟患者さんの診療をどのように進めていくか、とても悩んでしまいます。

 

 県外からの紹介患者さんは道義的に受け入れざるを得ないにせよ、大都市圏在住のご家族とどうやって面会していただくかという件は、本当に頭が痛い課題です。